卒業式に向けて 校長・教職員のみなさまへのお願い 「君が代」の歴史をきちんと伝えてください

(報告)2022年3月1日、今年度卒業式に向けて、市民団体D-TaCから、大阪市立小・中学校の教職員のみなさまあてに以下のメールを送ったとの報告がありました。転載します。

大阪市立学校のすべての校長・教職員のみなさまにお願いします

説明・学習抜きの「君が代」斉唱強制は、人権侵害です

子どもたちに、「君が代」の歴史をきちんと伝えてください

2022年3月1日

Democracy for Teachers and Children.       

~「君が代」処分撤回!松田さんとともに ~(略称 D-TaC)

大阪市教育委員会は、今年度(2021年度)の卒業式と来年度(2022年度)の入学式に向けて、2月21日付で「国旗掲揚・国歌斉唱については、令和2年2月3日付け教委校(全)第57 号『卒業式及び入学式における国旗掲揚・国歌斉唱について(通知)』に基づき、適切に実施するようお願いします」とする通知を出しました。

令和2年2月3日付け教委校(全)第57 号の指示とは、①「音楽の授業等における国歌斉唱の指導を進める」「卒業式及び入学式においては、ピアノまたは吹奏楽による伴奏で、しっかりと国歌が斉唱できるよう指導する」「式典においては、壇上正面に国旗を掲揚するなど、国旗を尊重する態度を育てる」こと、②教員自らの起立・斉唱の教育効果について周知徹底、③校長による教職員への起立・斉唱職務命令発出です。

一方、子どもたちへの強制を危惧する私たち市民団体D-TaCに対しては、2018年11月27日付で以下の回答をしています。

『教育委員会といたしましては、入学式や卒業式につきましては、学習指導要領に則って取り組む教育活動の1つと捉えております。さらに、学習指導要領の趣旨を踏まえ、教育活動の一部、または全部に参加できない意思を示す児童生徒がいた場合、その思いを尊重するとともに、指導にあたっては、児童・生徒の実態をふまえながら、参加のあり方について、当該児童生徒の気持ちに寄り添った丁寧な対応を心がけることが大切であると考え、今後も適切な指導に努めてまいります。』

 しかし、「日の丸」「君が代」については何を伝えて、どう指導するのか、市教委は何も示していません。子どもたちに直接対応している学校、教職員が自分たちで考え、具体化しなければならない状況です。

子どもを権利の主体と見る子どもの権利条約にそった指導が求められています。子どもの意見が大事です。まず、子どもたちに聞いてみたらどうでしょうか。「『君が代』の扱いや歌詞の意味は時代によって変わってきました。古今和歌集に載った古歌の『君が代』、曲がつけられた明治以降の『君が代』、国旗国歌法で国歌とされた『君が代』。どう変わってきたのか知りたいですか。」と。子どもたちが知りたいと言ったら、ちゃんと説明する必要があります。市教委にそれに答える内容を示してほしいと求めることは当然ですが、市教委は指導内容を示すことなく、「教育課程の編成権は学校にある」との答えだけが返ってくるでしょう。自分たちで考えるしかありません。

手がかりは、戦前の修身教科書の「日の丸」「君が代」の教材です。また、校務支援パソコンではアクセスできませんが、「資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について」も役立ちます。さらに、D-TaCブログには、昨年学校にメールで送った、『音楽の本に、「君が代」は、「日本の国の繁栄と平和を願う歌」と書いてあります。なぜそういう意味になるのかわからないので、説明してほしいです。』という生徒の質問に答える形での指導例(情報提供例)も載せていますので参考にしてください。

以下、「資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について」より一部抜粋しておきます。

【古歌の『君が代』】

「古今和歌集」の「賀歌(がのうた)」(長寿を祝う歌)にある「わが君は 千代にましませ さざれ石の いわおとなりて 苔のむすまでに」が変化し、平安時代末期から鎌倉時代初期には、「君が代は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで」になったと言われています。「君」は、目上や年長者を意味することが多く、めでたい席や行事で、彼(彼女)の長寿を祝い、願うための歌として歌いつがれてきたのです。もとは、「あなたの寿命が 千年も万年も 小石が大岩になって 苔がはえるほど長く続きますように」という意味だったのです。

【曲がつけられた明治以降の『君が代』】

1890 年、天皇が教育の目的を示した教育勅語(ちょくご)が出されました。「国民は天皇の臣民として、天皇の治める国が栄えるようにしなければならず、学校で勉強するのもそのためである」という内容で、「国の一大事(戦争のとき)には、国のため、天皇のために身も心も捧げなければならない」と教えるものでした。学校で行われる儀式も、全国で統一したものが決められました。入学式・卒業式の他に、天長節・紀元節などの祝日に「君が代」斉唱・御真影(ごしんえい:天皇・皇后の写真)に最敬礼・教育勅語奉読(ほうどく)を中心とした厳粛な式が行われました。国定教科書の中では、「君が代」は「天皇陛下のお治めになる世の中がずっと続きますように」という意味だとされていました。

【国旗国歌法で国歌とされた『君が代』】

1999 年 8 月、国旗国歌法が制定されたとき、政府は、現在の日本国憲法下での「君が代」の解釈を次のように示しています。「日本国憲法下にあっては、国歌君が代の「君」は、日本国及び日本国民統合の象徴であり、その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇のことを指しており、君が代とは、日本国民の総意に基づき、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国のことであり、君が代の歌詞も、そうした我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと解することが適当」

子どもたちの人権が尊重される学校でありますよう、ぜひ、ご尽力をお願いいたします。

【参考資料】
※資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について

https://democracyforteachers.files.wordpress.com/2015/08/handout01.pdf


※修身教科書(戦前の国定「道徳」教科書)の「日の丸」「君が代」
http://kohoken.chobi.net/cgi-bin/folio.cgi?index=lb2&query=/lib2/19420401.txt

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