要求書

2021年3月17日

大阪市教育委員会

教育長 山本 晋次 様

なかまユニオン・大阪市学校教職員支部

支部長 笠松 正俊

 前略。1月8日の市教委提案「大阪市立の高等学校等の大阪府への移管に伴う教職員の勤務労働条件に関する事項について」に対して、1月18日付で提出した「組合回答と要求」書を踏まえて改めて以下の要求書を提出し、団体交渉を申し入れます。

 なおこの要求内容は、継続中の府教育委員会と市教委との今後の協議に、現時点での任用(雇用)責任者である市教委がどういう方針で臨むかに関するものなので、府教委との協議に先立って、労使関係を持つ任用責任者としての市教委独自の責任で、直ちに交渉に応じることを要求します。

〇 要求内容

(1) 2021年度に勤務している教職員で、府立高校での継続勤務(任用)を希望する者全員を、府立高校に移管し、採用させること。

(2) 5年前の大阪市立特別支援学校の府移管時に、市教委が「推薦条件」を作って希望者を選別し、「分限休職」(病気休職)者9名を含めて13名を推薦せずに府の「採用募集」に応募させなかったことは、絶対に繰り返さないこと。

(3) 病気休職(分限休職)者は、先ずは現在の職場に復帰させるのが教育委員会自身の休職復帰制度上の原則です。府移管時に別の校種の職場に転勤を強要するのは病気再発の負荷になり、さらにパワーハラスメント性があります。希望者全員を現任の高校で継続雇用すること。

(4) 特別支援学校の府移管時に、以前1年以内において懲戒処分を受けた者のうち、当該非行行為の内容が、児童、生徒への教育指導上不適切な指導の場合又は公務員としての根本にかかわるものである場合については推薦から外し、「応募」させませんでした。この市教委による選別は不当です。分限・懲戒ともに、真に重大な場合は既に「免職」になっているはずです。復帰を想定した停職中や、既に復帰している者を推薦から除外するのは「二重の不利益処分」になり、違法性があって不当です。希望者全員を現任の高校で継続雇用すること。

(5) 特別支援学校の府移管時に、ステップアップ研修中の者を推薦から外し、「応募」させませんでした。この市教委による選別は不当です。そもそも「ステップアップ研修」は現勤務校への復帰が目標です。希望者全員を現任の高校で継続雇用すること。

(6) 大阪市立高等学校の教職員の勤務労働条件が、府立高等学校の教職員より有利な内容を享受している場合には、府への移管によって、既に教職員に与えられている内容を低下させることがないものとすること。1月8日の「提案内容」の主文(冒頭の4行)の中に、上記の内容を明示すること。

(7) 理科・家庭科・図書室担当等の実習教員(市の職制の「実習助手」)の各校ごとの配置数や、図書館教育の予算措置等、現状で市立高校が府立高校を上回っていることは、府移管で生徒の教育条件を低下させないために、移管校では当面継続することを、府に対して厳しく要求し確認すること。

〇 要求理由

大阪市立高校の2022年度の府移管が決まり、準備のための府との協議が始まっている。教育委員会は1月に、現時点での府との確認内容として「移管に伴う教職員の勤務労働条件に関する事項について」を各教職員組合に提案し、ほぼ同内容で高校の全教職員に対して「移管に伴う意向調査について」の個別アンケートを行った。

提案後の1月18日付の組合への回答文書で市教委(担当の教務部・教職員人事担当)は、「大阪市としては、希望する人全員が採用試験を受験、採用されるように大阪府に要望していきたいと考えているところです。」と書いているが、それは「要望してい(く)」だけでは決定的に不十分で、全員の雇用を継続することは、現在任用している大阪市(市長と教育委員会)自身の責務です。

  しかし、5年前に大阪市立特別支援学校が府に移管された時にこれと全く反する事態があり、「移管」希望を拒否された13名もの教職員が、府の「採用選考」に応募さえできませんでした。

  当時の府教委の「採用選考」文書(2015年7月17日付)は、「3、受験資格」の「(3)年齢・資格要件等」で「② ・・・分限休職又は停職中でない者」「④ 大阪市教育委員会が推薦する者」等と規定していました。(この府の規定も問題で、本来は「大阪市立特別支援学校の教職員で、希望するもの」とすべきでした。)

  大阪市教委はこの規定を受けて、市側の推薦規定を制定し、「(1) 職務を遂行しうる知識、技能等を有すること」「(2) 人物性行がその職にふさわしいこと及び当該職務に適格性を有し、これに堪え得る者」「(3) 当該職務を遂行し得る身体状況であること」としました。そしてそれを使って、「H27年7月1日時点でステップアップ研修中の人や、以前1年以内において懲戒処分を受けた者のうち、当該非行行為の内容が、児童、生徒への教育指導上不適切な指導の場合又は公務員としての根本にかかわるものである場合については、上記に該当するとして選考試験の対象となりませんでした。」(1月18日付の上記の組合への回答文書)として推薦から外し、「応募」させませんでした。その結果、病気休職中の「分限休職」者9名を含めて13名が小・中・市立高校への異動を強要され、内1名は退職しました。

  この市教委による選別は不当です。大阪市と府の間の行政の政策として移管するのだから、教職員一人一人の服務状態に変化はなく、復帰を前提にした制度の「休職」「停職」「研修」中の者を含めて、在籍者で希望する者全員を府に移管して任用すべきです。

  また要求内容(7)に関して市教委は、先の組合への提案文書と全教職員意向調査文書の両方に同文で「実習助手の採用者数が大阪府の配置基準を超える場合、現大阪府立学校の実習助手への配置となる可能性があります。」とし、事務職員についても「府の基準人数までは府の採用となります。」と人数を制限しています。工業高校を始めとした市立高校での実習重視の教育活動は継承すべきです。市会での「府移管」条例審議で市長と教育長は「現在の教育活動は低下させない。」と繰り返してきました。しかし例えば現1年生と来年度の新入生にとっては、卒業までの在学中に2022年度から教育条件が直接に削減され、市会での市長・教育長答弁にも反します。これらの制限規定は、削除すべきです。

            以上です。

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