2014年度基本要求 団体交渉申入書

2014年度基本要求について、以下の要求書を大阪市教委に提出しました。団体交渉は、2月の中・下旬の予定です。

2014年度基本要求 団体交渉申入書

                                 2015年1月26日

大阪市教育委員会

教育委員長 大森 不二雄 様

なかまユニオン・大阪市学校教職員支部

支部長 笠松 正俊

前略。

○ 私たち、なかまユニオン大阪市学校教職員支部は、支部組合員と大阪市立学校教職員の勤務条件の維持改善を図り、子どもたちの人権を守り、学校教育を民主的に発展させ、戦争のない民主的な社会を創ることを目的とし、目的実現のために、保護者・市民と必要な連携を図り活動することを決意し、2005年4月9日に組合を結成し、大阪市教育委員会と交渉と協議を重ねてきました。

 私たちは、大阪市と市教育委員会が、一人ひとりの子どもの人権が尊重され、豊かに育つ学校教育を保障し、戦争のない民主的な社会を創るために、教職員と、子どもたち、保護者、市民の声に耳を傾けると共に、以下の教職員の人権と勤務労働条件に関わる要求事項を実現されるように求め、団体交渉を申し入れます。

○ また、日本国も加盟しているILO・ユネスコ共同の「教員の地位に関する勧告」(1966年)は、第75項で「教員がその責任を果たすことができるようにするため、当局は教育政策、学校機構および教育事業の新しい発展の問題について教員団体と協議するための承認された手段を確立し、かつ定期的にこれを運用しなければならない。」と規定しています。国と共に勧告を受けた当事者の一人として、大阪市教委がこれを尊重し、学校教育に関する様々な課題について、団体交渉とともに協議の場も持つことを求めます。

○ 特に今年度は、管理職試験受験者の激減のための、来年度約30人という教頭不足予想、教員新規採用試験受験者の減少、講師希望者の不足による長期の担任欠員状況、等、大阪市教委の人事政策が既に急速に破綻しています。そのツケは教職員の過労と病気、子どもの荒れを生んでいます。その原因は、橋下市長と大森教育委員長が主導する教育「改革」が学校現場の現状を検証しないままに強行され、大きなマイナスになっていることです。個々の政策の是非だけではなく、「点数競争・子どもは管理と躾けなおし・教職員は統制」という根本政策を中止し改めない限り、学校と教職員の活性化はありえません。今年度は特に、その是正が市教委の責任であることを指摘し、以下を要求します。

  1. 下記の、教職員の人権・労働権と勤務労働条件に関わる「要求事項」について、2月16日(月)~27日(金)の間に、団体交渉を開催すること。

 交渉には、上記の危機的現状に責任を持つ教育長が出席すること。

2.そのための予備交渉を、2月6日(金)までに開催すること。

3.団体交渉要求事項

(1)「教育基本条例」制定以降の教育政策と教職員人事政策が、子どもと教職員に及ぼしている悪影響の全面的検証と、抜本的改正をすること。

① 職員会議と校内人事委員会の廃止は、教職員の専門性と共同性を潰し、勤務労働条件を劣悪化していて、ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」の前文、第9・10・146項に違反している。これらの廃止を撤回すること。

② 教頭希望者不足の、他市・他県とは違う根本原因の検証抜きでの、首席(教頭補佐)職と教頭補助職の新設案は、教職員の勤務労働条件の改善にはならない。これを撤回すること。

③ 校長の民間人公募と、民間人公募区長の教育次長任用、及び、教職員団体交渉を担当する市教委事務局の新設部長の民間人公募案は、ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」の第43項に違反し、教職員の専門性を破壊し、勤務労働条件の低下を招いている。これらを撤回すること。

④ 授業改善のためではなく、低位評価者作り・「指導力不足」教員探しのための授業アンケートの改悪と、評価システムと給料反映の中止を、大阪府教委と協議して行うこと。

⑤ 授業アンケートについて、当事者の教員から直接意見を聴取し、検証すること。

⑥ 他市・他県にも増しての大阪市の講師不足・欠員状況は、教職員の共同性を破壊し、勤務労働条件の低下を招いている。不足の根本原因を把握した上で改善対策を行い、必要な全人数を配置すること。

⑦ 過労による病休教職員の現状を把握し、改善対策をとること。

⑧ 中学校クラブ活動の一部民間委託化にあたって、委託先の個人・団体について、当該校の教職員が連携できる、教育指導者としての応募基準を明確にすること。

⑨ 中学校クラブ活動の一部民間委託化にあたって、当該クラブ担当教員の希望を尊重すること。

⑩ 中学校クラブ民間委託化が教職員の労働軽減になったかどうかを、年度末に検証すること。

⑪ 今夏の中学校教科書採択で、ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」の第61・62・77項を遵守し、授業当事者の教員の意見と、大阪市教科書選定委員会答申を全面的に尊重すること。調査資料に基づかない、教育委員の個別意見による教科書採択は教員の教育労働の条件を阻害するものなので、絶対にしないこと。

⑫ 全国学力調査の学校別の結果公表は、教育活動全体の中でテスト結果を最優先することで、教員の教育労働の条件を阻害するものなので、中止すること。

⑬ 学校選択制は、教職員と保護者・地域との協力を困難にし、教員の教育労働の条件を阻害するものなので、廃止を含めて見直すこと。       

(2)組合の学校施設使用禁止を違法とした大阪地裁判決等を踏まえて、「大阪市労使関係条例」を廃止すること。

① 廃止に向けて、市教委関連の労使関係の現状について、検証を開始すること。

(3)「労働安全衛生法」等を遵守し、パワーハラスメントを防止すること。

① 「労働安全衛生法」(第1条「職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。」)、「労働契約法」(第5条「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」)を、使用者・市教委の責任で遵守すること。

② 教育委員会と校長からの行為も含めて、パワーハラスメントが引き起こされることを、使用者の責任で防止すること。

③ 大阪市役所部局と連携して、大阪市パワーハラスメント防止指針を策定すること。

④ 策定するまでは、大阪府教委員会の「パワーハラスメント防止・対応指針」を準用し、厳守すること。

⑤ パワーハラスメントについて、市教委とは別の第3者の訴え相談窓口を設置すること。

⑥ 卒・入学式での国歌「君が代」の、教職員の起立・斉唱とピアノ伴奏に関して、心身に負荷を与えるような教育委員会と校長からのパワーハラスメントが引き起こされることを、市教委自らの責任で防止すること。

 起立・斉唱を事前に確認できない教職員に対して、繰り返し返答を強要し、心身に負荷を与えるようなパワーハラスメントを防止すること。起立・斉唱を事前に確認できなかった教職員に対して、本人の意思を無視して職員室の電話当番等の式場外での職務を命じ、式から排除するようなパワーハラスメントにあたる行為を絶対にしないこと。

 教職員のピアノ伴奏に関して、本人の心身の健康状態を無視した強要をしないこと。

(4)「労働安全衛生法」の遵守のために、条件整備をすること。

① 中学校給食実施の中でも、教職員の昼休みの休憩時間を確保するために、給食運搬設備・施設の改善と、運搬要員の加配を行うこと。

② 全校園の全施設について、アスベスト使用工事箇所の調査を行い、完全に撤去をすること。

(5)子どもの教育条件を切り下げ、当該教員に過重な労働を強いている、中学校実技4教科の小規模校兼務試行を、来年度は中止すること。

① 担当教員の勤務労働条件に大きな負荷が続いている現状について、今年度の担当教員に対して直接聞き取ることも含めて、現状の問題点の検証を実施し、公表すること。

② 兼務配置校について、当面すぐに、以下の勤務条件の改善をすること。

(ア)職員室の机を、複数での共用ではなく、兼務者についても1人1つの机を確保すること。

(イ)春・夏・冬休み中等の、授業準備・研修のための兼務校への出勤(出張)曜日を、兼務者自身で柔軟に決められるようにすること。

(ウ)兼務のために細かい連絡がぬけたとき、本人の責任にして厳しく追及する形ではなく、管理職どうしが密に連絡を取り合う等配慮して、学校体制としてフォローすること。

(エ)兼務校での担当教科以外の授業等の仕事は、できるだけ外すこと。

(オ)音楽発表会等の行事の前に、両方の学校での行事準備時間を確保すること。

③ 兼務配置校の弘済中学校分校(阿武山学園)の、新設校としての条件整備を急ぎ、勤務労働条件を改善すること。

(ア)備品を置く場所(倉庫[プレハブも含めて])と、多目的室等の特別教室を造ること。

(イ)近接の分校ではなく移動時間が1時間30分も離れているので、設備・物品等の移動・共用は難しい。分校と本校の予算は、共用できない物は別々に予算配当をすること。

(ウ)本校校長が遠隔地の分校を把握するのは難しく、教職員との意思疎通が困難になっている。現行の副校長ではなく、分校に最終責任を持つ管理職としての分校校長を別に配置すること。

(エ) 物品の注文や細かい連絡に本校との手間と時間がすごくかかり、教職員の加重負担になっている。分校に事務職員を配置して、教職員の勤務労働条件の負荷を改善すること。

(オ)分校に管理作業員を配置し、修理作業等を確保して、労働・教育環境を保障すること。

(カ)現状は教職員全体の半数が講師だが、仕事を次年度につなげられるように、講師ではなく正規雇用教員を確保すること。

(キ)学園として男女別々の学級のため、一般の学校の倍の授業時数になっているという実態に合った、教職員数を配置し、過重労働を解消すること。

(ク)進路指導の書類作成等に支障が起こっているので、学校の公印を本校と分校に別々に常置し、労働負担を軽減すること。

(6)国旗・国歌の指導において、憲法第19条・20条と「子どもの権利条約」を尊重すること。

① 卒・入学式での国歌「君が代」の起立・斉唱を、子どもや教職員等に強制しないこと。

② 「日の丸・君が代」が、明治維新以降の天皇主権制国家とアジア太平洋戦争推進に果たした、くり返してはならない歴史事実、及び国旗・国歌法の内容と制定過程の論議経過についての、教員から子どもたちへの学習指導を保障すること。

(7)中学校給食を、抜本的に改善すること。

① デリバリー弁当方式の見直しを含めて、喫食している子どもと教職員の声を直接聞いて検証すること。

② 当面すぐに、質と量の改善を行うこと。

(8)3/11原発事故を踏まえた原発教育を行うために、教員から子どもたちへの指導を保障すること。

① 「子ども・被災者支援法」に則り、被ばくから避難し転入している被災者・子どもの、避難の権利を守る施策を行うこと。

② 子どもたちが福島原発事故の放射線被害の理解を進め、今後も拡大が予想される晩発性の被害や、新たに可能性がある福井県での原発事故から、子どもたちが自分の健康を守れるための学習指導を保障すること。

③ 大阪市教委が専決で申し込み、2014年3月に各学校に送られてきた文科省新放射線副読本は、被ばくの危険性を伝えず、放射能汚染の現実と影響を小さく見せ、政府の年20ミリシーベルト以下の地域への帰還という政策を後押しするもので、子どもたちから原発事故と放射能汚染の現実を覆い隠す役割を果たす内容で、教員の教育活動の障害になっているため、使用しないこと。

④ 原子力産業の発展を目的とする関西原子力懇談会が実施する「放射線教育サポートシステム」の学校への持ち込みは、公教育への企業団体の介入で、教員の教育活動の障害になっている。これを許さないこと。

⑤ 福井県での原発事故が課業時間に引き起こされた事態を想定して、子どもと教職員の命を最大限に守るために、放射線防護と避難の計画を、大阪市・府と連携して策定すること。(例 SPEEDIによる放射能影響予測情報の学校現場での入手、ヨウ素剤の配布の判断とその手順、保護者との連絡、帰宅か学校待機かの判断、等。)

(9)大幅に遅滞している会議等の議事録の、教職員と市民への情報公開を、条例・規定を遵守して直ちに実行すること。

① 現在2年半分が遅れている、私たち職員団体との団体交渉議事録を、予備交渉も含めて即時に作成し、公開すること。

② 現在10か月分が遅れている、教育委員会会議議事録を、即時に作成し、公開すること。

                                                  以上

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