「追加申出書」を提出  (松田幹雄組合員からの報告)

 大阪市の教職員人事評価結果に対する苦情については、「苦情相談申込書」を提出すると、その苦情について市教委事務局が調査した結果として「苦情対応調書」が送られてきます。それに対して、更に「追加申出書」を提出すれば、大阪市教育委員会事務局幹部で構成する「苦情審査会」の審査に回されます。

 私の場合は、新人事評価制度3年目の2020年度人事評価結果に対する苦情への「苦情対応調書」の内容は、前年と全く同一の文面でした。経過からすると、苦情審査会の結果もきっと同じだと予想できますが、せっかくの機会なので、国際基準に照らして審査してほしいという要望を添えて、「追加申出書」を提出しました。

 審査結果が届けば、審査会の議事録とその審査会への提出資料を公開請求し、開示された文書は、人権侵害申立追加資料として、大阪弁護士会に提出していきたいと思っています。

[ 以下、 「追加申出書」 ]

2021年4月30日

大阪市教育委員会事務局 教職員制度担当課長様

元大阪市立●●中学校教諭(2020年3月31日まで) 松田幹雄

2020年度人事評価結果に対する苦情相談追加申出書

 送付された4月16日付苦情対応調書を受け取りました。

 記載内容は、「2 総評」が「申出内容を踏まえて関係者等に確認を行ったところ、一定の評価根拠が示され、重大な錯誤や評価エラー等、評価結果を修正するべき事由は確認できませんでしたので、以上により文書回答といたします。」で、2019年度の人事評価結果への苦情に対する「苦情対応調書」と全く同じでした。

また、「1 『能力評価に関する苦情』について」「『規律性』について」は、以下の通りでした。

 「本評価項目の着眼点は、『教職員としての自覚と認識を持ち、服務規律を遵守するとともに、管理職の指示・命令に従い誠実に業務を遂行していたか。』とあり、評価根拠について評価者に確認をしたところ、『制度上、教育職員に求められていることであり自己評価は入力するものであると指示したにも関わらず入力しなかった点が、期待レベルに達したとは言えず、2と評価を行った』とのことです。人事評価制度は、能力開発、人材育成を行ううえで必要となる行動(①計画を立て、②行動し、③結果を振り返り、④来期へつなげる)を繰り返し行うための仕組みであり、評価者・被評価者ともに、評価の結果明らかになった教職員の仕事の成果、能力を双方できちんと把握し、評価者からの必要な助言・指導・激励等を行うことで、OJTをより有効に機能させ、効果的な人材育成を行うことができます。人事評価制度を意味あるものとするためにも、評価者・被評価者ともに、一人ひとりがその目的をしっかりと理解し、適切に運用することが重要とされています。」

 これもまた、2019年度の人事評価結果への苦情に対する「苦情対応調書」と全く変わらないものでした。

 私が問題にしているのは、「制度上、教育職員に求められていることであり自己評価は入力するものであると指示したにも関わらず入力しなかった点が、期待レベルに達したとは言えず、2と評価を行った」という評価根拠を、「一定の評価根拠が示され、重大な錯誤や評価エラー等、評価結果を修正するべき事由は確認できませんでした」として追認する大阪市教育委員会の判断であり、この大阪市の人事評価制度のあり方です。2021年3月25日付で提出した苦情相談申出書にも添付した通り、私は、「この人事評価によって、教職員に圧迫を加え、良心を捨てた働き方をさせようとしていることは人権侵害」と大阪弁護士会人権侵害救済申し立てを行っています。

 この苦情相談追加申出書では、大阪市教委幹部で構成される苦情審査会での国際基準に照らした審議を要請したします。

 教師の地位や仕事についての国際基準としては、1966年の9月21日~10月5日に行われ、日本もふくめ76ヵ国の代表が参加したユネスコ特別政府間会議で採択された教員の地位に関する勧告」があります。日本国憲法98条2項は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする旨を定めています。 確かに、教員の地位に関する勧告は、条約そのものではありませんが、ILOと ユネスコは、同勧告の利用促進とモニタリングのために定期的に会合を開いており(CEART)、勧告の遵守状況について厳しい目を注いでおり、軽視することは許されないものです。

 〇「教員の地位に関する勧告」関連条項を以下にあげておきます(文科省仮訳より)。

VIII 教員の権利及び責務

職業上の自由

63  いかなる指導監督制度も、教員の職務の遂行に際して教員を鼓舞し、かつ、援助するように計画されるものとし、

  また、教員の自由、創意及び責任を減殺しないようなものとする。

64  (1)教員の勤務についてなんらかの直接評定が必要とされる場合には、このような勤務評定は、客観的なものとし、当該教員に知らされるものとする。

(2)教員は、不当と考える勤務評定に対して不服を申し立てる権利を有するものとする。

教員の責務

70  すべての教員は、その専門職としての地位が相当程度教員自身に依存していることを認識して、そのすべての職においてできる限り高度の水準に達するよう努めるものとする。

教員の権利

80  教員は、市民が一般に享受している市民としてのすべての権利を行使する自由を有し、また、公職につく資格を有するものとする。

また、人権についての国際基準としては国際人権規約B規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)があります。

 1976年に発効し、日本は1979年に批准しており、法的拘束力を有しています。今回の苦情に関係する条文は以下です。

第十八条

1  すべての者は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を有する。この権利には、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由並びに、単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に、礼拝、儀式、行事及び教導によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。

2  何人も、自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない。

第十九条

1  すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。

2  すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。

「教員の地位に関する勧告」や「国際人権規約B規約」という国際基準を念頭において、私の苦情について審議いただくようお願いいたします。

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