「調教教育」「パワハラ条例」は許せない! 卒業式「君が代」不起立の理由を知ってほしいです

大阪市立A中学校B

3月21日の朝日新聞の大阪市内版に「君が代で不起立 教諭の処分検討 大阪市教委」という私に関する記事が載りました。(読売新聞にも)

「大阪市教育委員会は20日、今月12日にあった市立中学校の卒業式で、男性教諭(59)が君が代斉唱の際に起立しなかったと発表した。教諭は、『自らの信じるところによった』という趣旨の説明をしているという。市教委は、市立学校の教職員に君が代の起立斉唱を義務づけた条例に反するとして、処分を検討する。

 市教委によると、起立斉唱条例が2012年2月に施行された後、同年3月の卒業式で教諭3人(市立中2人、市立小1人)が起立せず、戒告処分や文書訓告とされた。今回起立しなかった教諭はその中には含まれていない。」

(朝日新聞より)

 私は、記事の中に『自らの信じるところによった』と紹介されている、私が起立・斉唱職務命令に従えなかった理由を多くのみなさんに知ってほしいと思います。そのことを通じて、児童・生徒に対する率先垂範行為と位置づけられている「君が代」起立斉唱を処罰を持って強制する職務命令が、教育に荒廃をもたらしていることを訴えたいと思います。この強制によって、「君が代」斉唱を求められる児童・生徒に「君が代」の扱いや歌詞の意味の変遷すら説明せず、「君が代」を大きな声で歌うよう刷り込む「調教教育」が蔓延しているのです。また、この強権的権力的教育行政の背景に、憲法違反のパワハラ2条例(大阪市国旗国歌条例と大阪市職員基本条例)があることを訴えたいと思います。

 3月16日に処分のための事情聴取がありましたが、私は、聴取に当たった教育委員会職員に「弁明の機会」はどこで保障されるのかと問い、この場が弁明の場でもあることを確認し、「上申書(1)」を提出しました。また、提出を求められた顛末書にかえて「上申書(2)」を提出しました。今後、これら被処分対象者(私)の弁明文書が、処分審査・決定の場である人事監察委員会教職員分限懲戒部会の場や教育委員会会議の場に出されるべきだと要求していきたいと思います。

以下に、「上申書(2)」「上申書(1)」の順に貼り付けます。是非お読みください。

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2015年3月17日

大阪市教育委員会 様

大阪市立●●中学校

教諭  ●● ●●

上申書(2)

3月16日の事情聴取の場で、1.事実の経過2.反省、今後の決意などという項目の「顛末書」を書くように指示されました。しかし、3月16日の事情聴取の場が弁明の場でもあるということで、その場に上申書を出しています。その上申書と重なることも多いので、すでに提出した上申書の内容に補足する形で、上申書(2)として提出します。以後、3月16日に提出した上申書を上申書(1)とします。

1.事実の経過

上申書(1)でも書いているとおり、2月18日には口頭で、3月10日には文書によって、卒業式の国歌斉唱時、起立して斉唱するようにとの職務命令を学校長から受けましたが、私は、国歌斉唱時、着席し、歌いませんでした。その理由は上申書(1)に書いていますが、以下、もう少しくわしく述べたいと思います。

2.職務命令に従えない理由

1999年の国旗・国歌法で国歌とされた「君が代」は、明治以前は、目上の人の長寿を願う、おめでたいときにうたう歌、明治以降、国歌としての扱いをされるようになってからは、天皇統治の永遠を願う天皇制賛美の歌でした。1999年国旗・国歌法制定時の政府解釈は、「我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの」ということでした。このような経過のある「君が代」を国歌とするにあたっては当然反対も多く、制定時、「強制するものではない」というのが、政府の約束でした。

私は戦争を体験したわけではありませんが、体験談を聞く中で、天皇を現人神として絶対視した戦前戦中の社会が、人前で本音を言うことができない非人間的な建て前社会であり、再びこのような暗黒社会にしてはならないと強く思ってきました。また、そのような戦前・戦中の日本社会への認識をもつものにとって、それと固く結びついた「君が代」は決して歌えない歌であり、この歌を政府見解にそって歌うことのできるのは、戦前戦中の日本社会と侵略戦争に対する認識を転換したときだと思ってきました。すなわち、処分を背景に「君が代」起立斉唱を迫ることは、社会・歴史総体の認識の転換を迫る「思想・良心の自由」への攻撃であり、パワハラ行為だと感じています。

そして、更に憂慮するのは、職務命令による強制の教育への影響です。自分が処分されないためには、生徒に対して率先垂範して「君が代」を起立斉唱し、「しっかり歌おう」と呼びかけなければならないと教育長通知は脅しているわけです。これがもたらすものは、保身の蔓延であり、教育の荒廃です。子どもの権利条約のもっとも重要な規定が第12条意見表明権「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する」だと言われています。

意見を表明する前提として、必要な情報を知ることができるというのは当然です。しかし、卒・入学式の国歌斉唱にかかわっては、児童・生徒に意見を言う機会がないことはもちろん、「君が代」がどんな歌なのか説明すらしない状況が広がっています。この目をおおうような教育荒廃こそ、処分を背景にした職務命令によって保身を奨励する権力的教育行政が生み出したものです。

そして、その職務命令の背景に、教職員に起立・斉唱を義務づける大阪市国旗国歌条例と同一職務命令違反3回で免職、悔いを改めない限り生徒の前に立たせず、現場から隔離して思想転向をはかる大阪市職員基本条例があります。橋下・維新の会が主導して成立させたこれら2条例は、明らかに憲法違反であり、パワハラ条例であると思います。職務命令は、違憲・違法な2条例を背景に出されたもので効力を有せず、従う義務はないと考えます。また、私は、子どもの権利条約違反の教育荒廃、「調教教育」の現実をかえ、児童・生徒に、自ら判断するために必要な情報を届けたいと考えています。そんな私が、児童・生徒に対して率先垂範行為と位置づけられ、まさに「調教」のための行為である「君が代」起立・斉唱職務命令に従うことはできませんでした。

教育には多様な側面があり、1人の教員にも多様な個性があります。「君が代」不起立・不斉唱の一点のみをもって教員を排除しようとする教育行政やパワハラ条例の異常さに危惧を感じています。教育委員会には教育の条理にたちもどった教育行政を期待します。

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2015年3月16日

大阪市立●●中学校長 ●●●●様

大阪市教育委員会委員長 大森不二雄様

上申書

大阪市立●●中学校教員 ●●●●

2015年3月12日卒業式の「君が代」斉唱時の不起立についての事情聴取にあたって、事実、経過、及び私の主張について、以下、上申いたします。

1.卒業式当日の事実

2015年3月12日●●中学校卒業式において、私の席は、3列の職員席の2列目、左から2番目の席で、教頭の後ろの席でした。開式後、司会の「起立」「一同礼」「国歌斉唱」のことばの後に着席し、「君が代」斉唱はしませんでした。「君が代」斉唱終了後起立し、校歌はいっしょに歌いました。その後、卒業証書授与時の担任クラス生徒の呼名をしました。卒業式は変わったことは何もなく無事終了し、その後の学級での卒業証書手渡し・最後の学級活動もいい雰囲気でできました。私の不起立を見た生徒や保護者がいるのかどうかわかりません。少なくとも卒業式当日(12日)中に、保護者・生徒からこの件で問い合わせ・抗議があった事実はありません。

2.経過と不起立の理由

<卒業式不起立に至るできごと>

1月29日(木) 教務部会 「『君が代』について子どもたちへの説明責任を果たすべきだと思う」と発言

1月30日(金) 3年学年会 教務部会でしたのと同様の発言→考えよう

2月2日(月) 校長に「生徒への説明をすべき」と進言。

2限と5限 校長室(校長・教頭)

私から「資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について」【資料1】「寸劇:『指導』っていじめ?」【資料2】を渡す。

本年1月23日付で教育長通知が出ていることを知る。

校長「個人の立場はおいてルールに従うべき」「混乱が起こらないように」

2月5日(木)16:35~17:05 校長室(校長・教頭)

2月2日に校長に渡した資料が市教委に届いていることを確認後、「資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について」を生徒配布してもいいかどうか、見解を聞いてほしいと校長に要望。

校長からは、「混乱しないようにやりたいので協力を」

私「不起立そのものが混乱ではない。『君が代』についていろんな思いをもつ人が参加し、祝える式であるべき。」「自分の職務を全うし、不起立を理由に処分されたら、教育破壊の国旗国歌条例や処分行政を憲法違反として異議申し立てをしたい。」

その後、「混乱」をめぐってやりとり。

2月16日(月)始業前に校長に「2015.1.23大阪市教育長通知(別紙)について学校長への質問」【資料3】(組合への情報提供で得た通知【資料4】を添付)を渡し、全教職員へ机上配布。(全職員に対しては、資料1、資料2も)

20:45~21:15 校長室(校長・教頭)

校長「生徒への説明等は●●中学校の教育課程の問題。歴史をつたえ、その上で国旗国歌を尊重する気持ちを育てたい。」

この後、「混乱」の理解をめぐってやりとり。

教頭「何がおこるかわからない状況になることも混乱」

校長「不起立によって嫌な思いをする人を出したくない」

私「いろんなことを思う人がいること自身が混乱ではない。式の枠を前提にし、その式に合わせることが子どものためとする論理は、思想・良心の自由を押さえつけるために使われており、認められない」

2月17日(火)16:00~18:00 職員会議

私「学校長への質問書を昨日配らせてもらっているが、改めて質問する。」(3点について質問した質問書内容の読み上げ)

校長「18:00を回ったので、場を改めて回答する。」

2月18日(水)8:30~8:40 職員朝礼

校長「教育長から『卒業式及び入学式における国旗掲揚・国歌斉唱について』という通知が出ている。校務支援パソコンに送っている。『国歌斉唱にあったては式場内のすべての教職員は起立して斉唱すること』という職務命令を出す。」「昨日の質問については、前提部分に調教教育とのことばもあり同意できないので、項目ごとの質問には答えず、全般的に思っていることを伝える。生徒の学習内容については学習指導要領にも位置づけられており、●●中学校の教育課程の問題として教育課程検討委員会等で検討し、具体化していきたい。」

2月23日(月)始業前、校長に「大阪市教委国旗・国歌通知に関わる学校長回答(2.18)に対する再質問書」【資料5】を手渡したうえで、全職員への机上配布。

職員朝礼の中で発言し、私から校長に対して再質問に対して回答するよう要請する。

2月26日(木)臨時職員会議(卒業式の式次第について)

主要議題の論議終了後、校長「3月5日(木)の常置委員会と3月10日(火)の教育課程検討委員会を入れかえる」と連絡。

3月5日(木)教育課程検討委員会

「国旗・国歌については、事実を伝えることを大切にする。」「具体化は3年生で。」

3月6日(金)18:30~19:00 校長室(校長・教頭)

校長「職務命令も出したが、混乱させたくないので、起立してほしい」(1・23教育長通知を私に手渡し)

私「職務命令で『君が代』起立・斉唱を強制するこの教育行政のあり方が、教育破壊であるという指摘に対する見解表明がない。不当な職務命令には従えない。処分されれば、異議申し立てをしたい。」

3月9日(月)職員朝礼

(事前に教頭より1・23教育長通知を全職員に配布)

校長「校務支援パソコンの回覧ではわかりにくいとの指摘があったので、再度机上に配布させていただいた。今年の卒業式では新しい試みもあり、ぜひ成功させたい。混乱しないようにお願いしたい。」

私「起立斉唱の職務命令を学校長が出したことは認識しているが、異議がある。こういうやりかたが教育を壊していると思う。

卒業生を祝う立場で出席している者が『君が代』の時起立しなかったからといってそれが混乱だとは思わない。」

3月10日(火)卒業式練習

最後の時間(5~6分)で、学年主任から「君が代」の歴史と卒業式での扱いについての説明。学級に帰ってから、学級担任より、「資料:卒業式・入学式の国旗・国歌について」(生徒配布版)【資料6】を生徒配布。

17:10~18:00 校長から私あての「起立・斉唱」職命令書を手渡し。

3月12日(木)10:00~12:00卒業式 12:00~12:30学級活動

       14:20~14:00 校長室(校長・生徒指導主事)

       卒業式の「君が代」斉唱時の不起立の確認

<職務命令に従わなかった理由>

 「国歌斉唱」を卒業式に位置づけ、生徒に歌うことを求めているのに、生徒は歌詞の意味の説明すら受けられないのはおかしいと考えていました。生徒たちに聞くと、出身●小学校のどこでも、卒業式で斉唱することになっている「君が代」の歌詞の意味について説明を受けていないということでした。今、ほとんどの学校で、卒業式に国歌「君が代」斉唱が位置づけられている理由や「君が代」の歌詞の意味について、斉唱を求められている児童・生徒自身に説明しないという非教育的かつ子どもの権利条約違反の現実があります。その原因は、「君が代」の歌詞の意味を「我が国の末永い繁栄と平和を祈念するもの」とする無理な意味づけであり、「君が代」の起立・斉唱と児童・生徒への「指導」を、教職員の思想・良心の自由を踏みにじって強制する2015.1.23教育長通知に象徴される権力的教育行政にあります。教職員に考えることを禁止し、命令に従うことだけを求めるこの教育行政のあり方が、「君が代」の歴史や歌詞の意味について子どもたちに事実すら伝えず、「国歌」はしっかり歌うものという刷り込みだけを行う「調教教育」につながっています。そして、その背景に、憲法違反の「国旗国歌条例」と「職員基本条例」があると考えます。「臣民」を戦争に動員する大きな一翼を担った天皇制賛美の「君が代」を起立・斉唱できないという思いとともに、教員の生徒に対する率先垂範行為として位置づけられている「君が代」起立・斉唱の職務命令に従うことは、「調教教育」の一端を担うことになると思い、従うことができませんでした。「国旗国歌条例」「職員基本条例」というパワハラ条例こそ違憲・違法であり、それに基づく職務命令に従う義務はないと考えます。

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