久保校長文書訓告取消を求める大阪市教委との協議(2021.11.1)報告

15:30~17:30 大阪市役所地下1階第1共通会議室

出席者:大阪市教育委員会事務局

教務部 教職員人事担当 服務・監察グループ 草川課長代理

    総務部 総務課 広報広聴担当 岡嶋係長

出席者:教職員なかまユニオン組合員他  合計13人

<「協議」に至る経過>

私たちは、8月27日付で『大阪市立木川南小学校 久保敬校長に対する「文書訓告」に抗議し、撤回を求める要請並びに質問』を提出し、10月11日付で文書回答を受け取った。しかしながら、4つの質問に対する回答はいずれも納得できるものではなく、「文書訓告」の撤回を求める要請については直接の回答がなかった。そのため、11月1日に「協議」を行うこととし、「協議」内容を深め、実りあるものにするために、10月25日付で『「協議」に向けての質問』を提出した。冒頭で回答を受けて「協議」を開始した。冒頭回答(抜粋)は以下。

<協議に向けた質問への冒頭回答(抜粋)>

質問:今回の文書訓告にある「あなたの行為」は、意見表明にかかわる「行為」なので、文書訓告の対象にならないのではないか?

回答:意見表明を行った行為そのものに対して文書訓告をしたものではない。(拡散したこと自身が問題でなく、提言の中身が問題

質問:久保校長のどんな行為が、どういう意味で、地公法第33条「職員は、その職の信用を傷つけ、または職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」に違反するのか?

回答子どもの安心・安全に関する教育委員会の対応に懸念を生じさせたこと緊急事態宣言中の学校運営に関する通知に基づき尽力する関係教職員らの努力を蔑ろにしたこと児童・生徒を商品に例え不適切な表現をしたこと、(それにより)日々業務に励む関係教職員らの努力を蔑ろにしたこと、提言を拡散させたこと、が信用失墜行為に該当すると考える。

文書訓告は、提言の中身を問題にしたものだということがはっきりしたので、文書訓告の内容について、提言の該当箇所のどこを問題にしているのか説明を求めた。

<文書訓告の内容についてのやり取り・確認>

【文書訓告内容①】

この通知(市教委通知)に基づき、学校運営に当たる教職員らが尽力する中、あなたは提言において、教育委員会の対応について、その決定過程や他校の状況等を斟酌することなく、独自の意見に基づき、本市の学校現場全体でお粗末な状況が露呈し、混乱を極め、子どもの安心・安全が保障されない状況を作り出していると断じ、子どもの安心・安全に関する教育委員会の対応に懸念を生じさせ、関係職員らの努力を蔑ろにしたものである

【文書訓告内容①に対応する提言該当箇所】

「また、コロナ禍により前倒しになったGIGAスクール構想に伴う一人一台端末の配備についても、通信環境の整備等十分に練られることないまま場当たり的な計画で進められており、学校現場では今後の進展に危惧していた。3回目の緊急事態宣言発出に伴って、大阪市長が全小中学校でオンライン授業を行うとしたことを発端に、そのお粗末な状況が露呈したわけだが、その結果、学校現場は混乱を極め、何より保護者や児童生徒に大きな負担がかかっている。結局、子どもの安全・安心も学ぶ権利もどちらも保障されない状況をつくり出していることに、胸をかきむしられる思いである。」

◆追及したこと(主なやり取り)

私たちは、「学校現場が混乱したことは市教委も認めているのではないか」と指摘し、「一時期、混乱した時期があった」ことを認めさせたうえで、「教育委員会も認めていること(混乱したこと)を表明したことが独自の意見か?どこが独自の見解なのか?」と追及した。また、「提言は市教委の対応を問題にしているのであって、現場教職員の努力を否定していない。提言のこの個所のどこが『関係職員らの努力を蔑ろ』にしているのか?」と追及した。市教委は答えることができなかった。現場教職員の受け止めについて「久保校長の提言というのは、久保校長さんが誰よりも先に言ったというのではなく、非常に困っている現場の教職員の実態があってのことだった。僕ら現場の立場から言うと、よう言うてくれはったというのが実感だ」との発言があった。

【文書訓告内容②】

また、提言には『学校は、グローバル経済を支える人材という【商品】を作り出す工場と化している』との記述があり、これが比喩的な表現であることを考慮しても、児童生徒を【商品】に例えていることが不適切な表現であるとともに、日々業務に励む関係職員らの努力を蔑ろにしたものである。

【文書訓告内容②対応する提言該当箇所】

「学校は、グローバル経済を支える人材という「商品」を作り出す工場と化している。そこでは、子どもたちは、テストの点によって選別される「競争」に晒(さら)される。そして、教職員は、子どもの成長にかかわる教育の本質に根ざした働きができず、喜びのない何のためかわからないような仕事に追われ、疲弊していく。さらには、やりがいや使命感を奪われ、働くことへの意欲さえ失いつつある。」

◆追及したこと(主なやり取り)

私たちは、「児童生徒を『商品』に例えたことが文書訓告の理由と言っているが、『商品』ということばを使わなければ処分の理由にならないのか?」とただし、「この部分については『商品』ということばを使っていなければ訓告の対象にならない」との回答を得た。「久保校長の提言は、市教委の教育政策・教育方針が問題と言っているのであって、業務に励む教職員の努力を否定していないのに、なぜ、『関係職員らの努力を蔑ろにした』と言えるのか?」と追及したことに対して、市教委は答えることができなかった。

<久保校長の提言内容とその提言拡散承認の行為が信用失墜行為であるのか>

8月20日に市教委は、ホームページにおいて久保校長への文書訓告発令を公表したが、そのページには「このページについてのご意見」欄があり、1000字以内で意見を出せるようになっていた。後の公文書公開請求によって、8月20日から1か月間の公開期間の「ご意見」欄に寄せられた意見は180通あり、すべてが、久保校長への文書訓告を批判するものだったことが明らかになっている。このことについて事実関係をただした。

出席した服務・監察担当の課長代理は、ホームページ上に「ご意見」欄があったことを承知していなかったが、供覧で回ってきた意見は見て、ほぼすべてが文書訓告を批判するものだったことは認識していると答え、その文書は、服務・監察グループ内で保管していることを認めた。180通のうち16通も文字化けがある状態が放置されていることを問題にし、市民が真剣に書き込んだ意見の扱いに対する疑念があるため、「ご意見」欄を設けている意図、及び、意見がどう扱われるかのプロセスの説明を求め、後日説明を受けることになった

その上で、「信用とは市民の信用なので、信用失墜かどうかを決めるのは市民ではないか。寄せられた意見がみんな校長の行為は信用失墜ではないと言っているのだから、市教委が独自に判断した文書訓告は見直すべきではないのか?」と追及した。他にも、9月24日の教育こども委員会での北野委員、武委員、井上委員の質疑、いくつかのマスコミ報道、名田校長と255人の意見書等、すべて、文書訓告を批判するものだった事実をあげ、文書訓告取消を迫った。また、「職務上の義務違反は、できないことをやれと命じた市教委。まず処分すべきはそちら。」と追及した。

久保校長の提言内容とその提言拡散承認の行為はなんら信用失墜にあたらず、市教委の文書訓告こそ市民にとって信用失墜行為であることが明らかになった

最後に、この文書訓告が、国際基準である「教員の地位に関する勧告」に抵触するのではないかと追及し、見解を求めた。

<この文書訓告が「教員の地位に関する勧告」に合致しているかどうかについて>

この文書訓告は、「教員の地位に関する勧告」パラ63「いかなる指導監督制度も、教員の職務の遂行に際して教員を鼓舞し、かつ、援助するように計画されるものとし、また、教員の自由、創意及び責任を減殺しないようなものとする」、及び、パラ80「教員は、市民が一般に享受している市民としてのすべての権利を行使する自由を有し、また、公職につく資格を有するものとする」に合致していないのではないかとの問いに対する回答は、「趣旨にできるだけ沿うように対応しているが、今回の措置が合致しているかどうかまでは判断していない」というものであった。そこで、さらに「教員の職務の遂行に際して教員を鼓舞し、かつ、援助するように計画されるものとし、また、教員の自由、創意及び責任を減殺しないよう」にすべきという趣旨は了解しているか、と問い、「了解している」ということだったので、「今回の久保先生への文書訓告は、久保校長を鼓舞し、援助するものではない、また、久保校長の自由、創意及び責任を減殺しないものではないですね」と確認を求めた。それへの回答は、「回答を控える」というものだった。

今回の久保校長への訓告処分は、明らかに、国際基準「教員に地位に関する勧告」に抵触するものであることが明らかとなった。

<久保校長への文書訓告を撤回させ、大阪市教委の姿勢を抜本的に改めさせよう>

久保校長への訓告処分は、大阪市の教育政策・教育方針への批判を力で封じ込めようとするものと言える。しかし、その文書訓告には、一片の正当性もないことが明らかになった。声を上げ、批判を広げ、文書訓告を撤回させて、市教委の強権的姿勢を抜本的に転換させよう

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