きのくに子どもの村学園・宛「要請書」(2022.8/9)

要 請 書

2022年8月9日

学校法人 きのくに子どもの村学園

理事長 堀 真一郎 様

なかまユニオン

執行委員長 井手窪 啓一

前略。

本野組合員からの勤務労働条件等の改善要求に端を発した7年半にわたる労使交渉を、最終の「労使確認書」(2022年8月9日付)と、2022年8月9日の団体交渉を以って終えるにあたり、法人の今後の、労務管理を含む学園運営に関して、その社会的責任を踏まえて、以下を要請します。

早期に文書で回答されることを求めます。

1、

法人は学園の理念として、現在の日本の公立学校ではできていない“子どものための教育”を

掲げています。堀真一郎理事長の著書「きのくに子どもの村の教育」には、こう書かれています。

「世の学校教育にはさまざまな常識がまかり通っている。(中略)

  教師は指導し、子どもは従う。教師は「先生」と呼ばれる。教師には教師としての権威が必要だ・・・・・などなど。」

 それらを批判し、「学校教育の見直しと改革」のために、こうも書かれています。

「子どもとともに笑える教師は、内面が自由で幸福な教師である。こどもを笑う教師は、子どもから笑われる不幸な教師だ。」

しかしその実現のためには、その実現を担う教職員全員の、勤務労働条件の保障と改善、トップダウンではない民主的な労務管理が、絶対に必要な条件です。

「反面教師」として、今特に大阪の公立学校は、教職員は、5段階人事評価とその給与反映でバラバラに分断され、同僚間も含めたパワーハラスメントが広がっています。

 その下で過ごしている子どもたちも、年に何回もの学力テストとその結果公表で友だちと切

り離され、その結果不登校も全国最大で増え続けています。

法人の理念を本当に実現するためにはまず、

「労働者とともに笑える経営者は、内面が自由で幸福な経営者である。労働者を笑う経営者は、労働者から笑われる経営者だ。」

という理念を踏まえた教職員を励ます労務政策が必要です。

今回の「労使確認書」で法人は、「2 ②(断続的労働)」を始めいくつかの点について、これまでの労務管理に労働基準法違反があったことを認め、改善を約束しています。

今後これらを守ることは前提として、さらに勤務労働条件を改善していく努力は、公費助成を受けている学校法人としても求められます。

なお法人は、不払いを認めた労働債権について、法的時効(3年)以内分の清算支払には本野組合員に対して応じましたが、それ以前の不払い分は「時効」を主張してきました。

しかし例えば上記の「労使確認書」の「2 ②」(断続的労働不届け問題)で、要求し続けている本野組合員に法的「時効」分も支払うことだけでなく、本野組合員以外の小・中学校寮職員の法的「時効」分も清算支払いすることも、法律違反を認めた法人の社会的責任だと組合は考えます。

2、

また、この間の団体交渉で組合は、勤務労働条件と労務管理に関係して、法人の学園運営の数多くの問題点についても指摘をしてきました。それは最終の「労使確認書」(2022年8月9日付)では、第「4」項目として労使確認になっています。

団交を終えるにあたり、上記の確認内容以外のことも含めて、当該の本野組合員が就労の中で経験してきた以下の問題点を改めて法人に伝え、今後の法人の学園運営の抜本的な改革を期待したいと考えます。

イギリスの「サマーヒル・スクール」をモデルにして設立された「きのくに子どもの村学園」は、サマーヒル創設者のA・S・ニイルが教鞭をとった公立学校を買い取り、更にサマーヒル・スクールをモデルにして設立された「キルクハニティー・スクール」との交流を深め、キルクハニティー学園を買い取る等々、海外不動産への投資をしてきました。他方で、日本の在校生の住んでいる学園の寮のバルコニーが腐っても直ぐに工事をしなかったり、おねしょをする児童のベッドの床木材が腐るまで放置したり、給食を人数分より少なく発注したり等、子どもの命や健康を最優先して資金を回すことをしていませんでした。

また学園の基本方針である「自己決定の原則」で書かれている、「サマーヒル・スクール」では絶対に覆されない教育の根幹である、「学習計画や行事の立案等々、子どもと大人の話し合いが行われるミーティングで民主的に決まります」が守られておらず、決定した内容について職員会議で大人たちが注文をつけて変更するという事が行われていたり、「自分の入るクラスが選べます」が守られていなかった事実がありました。また既に全校ミーティングで対応が決定し決着済みの過去の事案・出来事について、大人が再度その案件を持ち出して生徒を責める行為が行われたりと、子どもたちに正統な民主主義を学べる場を提供していなかったと言わざるをえません。

また堀真一郎理事長は、「設立当時から反乱分子は生まれてくることはあったが制圧してきた。」と学校行事の場で何度も口にして、職員へ心理的圧迫を掛け続けていたことも、民主主義をこどもたちが会得する障害となっていました。

 これらのことは今後は繰り返されてはならないし、そのためには教職員集団による学校運営の抜本的な改革が求められていると、組合は考えています。法人全体の努力に期待したいと思います。

最後に、在籍児童・生徒の保護者の収入に応じた授業料等の負担軽減制度や、法人独自の奨学金制度の設置で、生活条件が様々に異なる全ての子どもたちに公立校と同じように門戸を開く努力をされることも、法人の社会的責任として、合わせて要請します。

以上です。

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