大阪市会に陳情書を提出 2025.9.16             教職員の人事評価制度の検証と改善に関する 陳情書

教職員の人事評価制度の検証と改善に関する 陳情書

大阪市会 議長 様

[ 陳情趣旨 ]

   教育行政権限の都道府県から政令指定市への移管以降、教員職員の人事評価制度について大阪市教委は、大阪府教委とは別の制度を実施してきました。大阪市長部局の行政職員については、以前から全職員対象の無記名アンケート調査が行われ、部分的な制度改定もされてきました(下位評価者の昇給反映の遅れを回復調整する等)。一方教育委員会は新評価制度実施以降一度もそのアンケート調査を行わず、一昨年2023年度になって初めてそれを実施し、過去2年の集計結果だけは公表されました。しかし調査の目的に「人事評価制度を検証し、必要に応じた見直しや運用改善等につなげるため」と書いているのに、その集計結果の分析と検証については、少なくとも公的記録・文書が残る形では現時点では全く公表されていません。

  アンケート調査に回答した教職員の、文章での自由記述欄の全文の全員分も、情報提供請求に応えて公表されていますが、評価者(校長)・被評価者(教員)ともに、現行制度の問題点を訴え、抜本的な改善を求める声が大多数です。特に、この制度が原因で勤務意欲が減退しているという訴えがかなり出されています。

  その状態が続く中で今、東淀川区の小学校での2024年度末人事評価結果で、事実経過に基づかない、校長による恣意的な「下位評価」(第4区分)と、その給与反映での大幅な損害という、不公正な事態が起こっています。その経過については、当該教員等の訴えを受けて教育委員会が現在再調査はしていますが、以下のように評価者の校長が現行制度を理解できていません。(その後教育委員会も、面談の説明の場で、学校長の制度不理解を認める発言をしています。)

・前提の事実として、当該小学校の同年度の評価結果で、対象教職員13名中3名が第4区分で、23.1%に上る。(なお教育委員会が「人事評価制度運用の手引き」60ページで無条件に第4区分以下と規定している懲戒処分者や欠勤者は、当該の3名にはいない。) 大阪市全体の第4区分の平均が1.3%(公表で最新の2023年度)なので、異常に突出している。

・下位評価である第4区分評価が、昇給や勤勉手当の減額に直結し、退職金を含めて生涯賃金の大幅減額になること自体を校長は理解していず、下位評価だった当該教員3名に給与への影響についての必須のはずの説明を行なっていない。(校長は、「そんなに急に下がる訳ないやろ。」と発言し説明していた。)

【市教委発行「人事評価制度運用の手引き(教職員向け)」2025年度版 P66の記載内容】

 「評価結果の活用として、評価区分が、原則、給与処遇に反映されることになるため、評価結果に対する教職員の納得性の向上を図る上で、これまで以上に評価結果の開示が重要となります。」

・校長は評価結果の開示において手渡しただけであり、評価内容についての説明を行なっていない。【同上の「手引き」 P45 (以下、同じ)】

 「評価結果の開示については、評価を受ける教職員に対して評価者がどう評価したかを明示することにより、評価の公平・公正性、透明性および被評価者の納得性を高めることを目的としています。」【「手引き」 P67】

 「開示方法 被評価者に印刷した人事考課シートを手交し、評価内容についてフィードバックを行なってください。
 評価結果が低かった教職員  改めて今年度評価についての総合コメントを伝え、来年度に向けて改善すべき点等について指導を行うなど、適切な措置を講ずるよう努めてください。」

・中間面談を行なっていない。下位評価だった当該教員3名に年度途中の指導はしていなかったので、評価結果を見てから聞きに行った者だけが初めてその理由を知らされ、改善対応策を考えることすらできない。【「手引き」 P41】

「中間面談

 教職員の業務の進捗状況を十分に把握し、進捗が遅れている場合は原因を分析の上、その問題点を早期発見するとともに、対応策についても十分に意見交換を行います。その際、教職員の業務運営や課題への取り組み方が不十分であると思われる時には激励し、適切な指導助言を行います。」

・最終評価直前の期末面談(2/17)において、下位の第4区分になる可能性・理由について指導・助言が行われていない。校長から聞いたのは、「(公務分掌が)難しい立場であったこと」「優しいところがいい所だが、全体を動かす時には厳しいことも言わないといけない。」との話だけだった。【「手引き」 P63】

「期末面談  面談の実施にあたっては、被評価者の業務の進捗状況や取組状況を把握しておく必要があることから、事前に、期待レベルを上回る項目•下回る項目について整理しておいてください。」【「手引き」 P64】

 「面談内容  改善点(被評価者の弱みに基づいて、来期に向けて改善を求める事項等)、来期に向けて期待する点、短期的目標、今後のキャリア・長期的目標などについて具体的に説明し、教職員の一層の能力発揮や仕事への動機付が図れるよう、適切な指導・助言を行なってください。」

・第4区分とした根拠事実の説明が、評価以後に何度も変わり、評価実施以降にあった事実経過まで持ち出されている。当該教員の一人が事実経過の誤りの訂正を求めたので校長が市教委に連絡相談し、さらに当該教員が市教委に苦情申し立てをした4月以降は、校長が3月末まで根拠としていた理由が一切使われていない。【「手引き」 P67】

 「なお、「事実確認シート」など被評価者の評価対象事実を記録したもの自体は本人開示の対象外ですが、評価の根拠となるものであるため、適切な把握及び記録に努めてください。」

・年間目標の達成や担当の業務については大きな問題はないと言いながら、「キャリヤも考えた時に、期待レベルに達しているとは思わなかった。」「5年目までの若手の人たちと、同じ基準ではやっぱり測れない。」と後から説明し、校長の主観による評価であることを公言している。【「手引き」 P74】

 「評価者は(中略)、客観的に評価を行うことに加え、面談の際には被評価者の意見・考えをよく聞くとともに、自分の考えを十分に説明し、評価結果についての納得と、評価制度に対する理解を得るよう努めてください。」

 しかしより大きな問題は、このような校長の誤りを、教育委員会が是正しなかったという経過の方です。その後の経過は以下でした。

・当初第4区分の理由としていた事実の認識の誤りを認めた校長が、4月に第3区分への訂正を本人に約束し教育委員会に相談したが、市教委は「新年度に入っているから訂正はできない。」という、「手引き」書には全く記載していない理由だけで事実誤認の問題には言及せずに受け入れなかった。(なお加えて校長は、その結果を本人には、全く伝えなかった。市教委に苦情申し立てをした本人面談の場で、初めてその結果を市教委の担当者から聞かされた。)

・本人は市教委に苦情申し立てをしたが、市教委担当者は本人への聞き取りで、「校長先生が各先生方の仕事の様子を確認されている評価ですから、我々がそれは間違ってますよって言うようなものではありません。」と対応し、評価根拠の事実の誤りを把握すること自体を放棄した。

・そもそも今回校長は、年度末の評価結果を職員室で各教員に手渡しただけで、評価結果を伝えての説明を一切していない。上記等のいろんな「説明」は、本人の方から下位評価に驚いて理由の説明を求めに行って初めて校長から話された。市教委は5段階のどの評価結果であっても評価結果の面談での開示(フィードバック)を制度で規定しているが、年度末の多忙の中で、現実には多くの学校で多くの校長が、結果開示での面談を行っていない。(その事実は、一昨年度から市教委が実施を始めた「評価者・被評価者全員対象の無記名アンケート調査」の集計結果で、明らかにされている。2024年度の集計結果では、平均「30分以上」が6割だが、5分未満や不実施を含めて「30分未満」が4割にのぼる。)

 つまり今回の件は、単にその評価者(校長)だけの問題ではなく、現行制度の問題点が全面的に露呈した「一例」と考えられます。今回の件から見るだけでも、現行制度の以下のような問題点がわかります。

・年間目標の達成状態や職務上の事実経過に基づく評価ではなく、評価者である校長と教頭(一次評価者)の「期待レベルに達していない」というような主観の評価になっていること。

・校長も評価結果の根拠を説明しきれないので、各教員の今後の課題を提示することはできず、特に給与と生涯賃金の減額に直結する下位評価者に対しては必須のはずの評価結果の開示面談が、十分に行われていないこと。

・制度上は、「その(評価)結果について評価者の見解と相違があり、当事者間の話し合いでは解決が見込まれない場合、苦情を申し出ることができます。」と規定されている。つまり「当事者間の話し合いで(の)解決」が先ず推奨されています。他方、その「解決」は当年度(3月末)中に限るという規定は全くしていないのに、それが新年度(4月1日)以降は否定されていること。

・教育委員会に苦情を申し出た場合も、4~5月の聞き取り相談段階も、その後の苦情審査会審査に入ってからも、教育委員会は事実関係の調査は全くしない制度になっていること。

・そもそも苦情審査会は教育委員会の職員だけで構成する内部会議であり、例えば「いじめ問題事案」の場合の第三者機関のような事実経過の調査は全くしない。現行制度上の手続き書類を確認する程度の「審査」だけなので、その結果、過去の多数の苦情申し立て事例に対しても、不公正だった結果が訂正・是正された事案は存在せず、全て教育委員会によって追認されてきていること。

結論として、給与反映する人事評価は、職務の実行上の事実に基づくことが大前提の制度のはずですが、現行制度の実態はその保障が崩れています。説明と納得がない下位評価は経済的な損害に加えて大きな精神的打撃にもなっています。同じ管理職から次年度からも繰り返されるかもしれないという不安が、パワーハラスメント被害の感情を生み、勤務意欲の低下とさらに離職の気持ちを生んでしまっている実態が広くあります。

 既にアンケート調査結果の原資料はあるのだから、教育委員会(事務局担当部局)だけの手に限らずに、行政職とは独自の教育職の人事評価の専門研究者の知見も含めた、現状の検証と制度改善が市政の責任です。大阪市立校の教員の途中退職と欠員状態が続いている中で、それは待ったなしの課題です。

 なおアンケート調査結果の自由記述欄では、評価者(校長)と被評価者(教員)の両方から、現行の評価制度の文書作成のための年間を通じた事務的実務自体が、超過労な学校現場の大きな原因になっているという声が多く出ています。現行制度は、「目標管理制度」と「人事考課制度」の二重制度で、それぞれの書類作成が負担になっています。また「目標管理制度」で年間目標の「必ず数値化」への書き直しを校長から繰り返し求められるとの声や、「目標管理制度」で目標を達成しても「人事考課制度」になって納得できる理由説明のないままの下位評価にされる、という訴えも根強く出されています。制度改善にあたっては、制度自体の抜本的な簡素化が検討課題になっています。

 また、少なくとも事実認定を誤った不公正な評価結果については、教育委員会自身の手で速やかに是正することが必要です。

[ 陳情項目 ]

 現行の教職員の人事評価制度について、教育委員会が行った2023年度と2024年度の「人事評価制度についての評価者・被評価者全員アンケート調査」の集計結果を、教育行政・教員評価制度の専門研究者を含む第三者の意見も聞いて、至急に分析と検証を行い、制度の抜本的な改善を図ること

2025年9月16日

陳情代表者
 住所  大阪市都島区東野田町4-7-26-304
 代表者名  なかまユニオン・大阪市学校教職員支部  支部長 笠松 正俊

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