「緊急事態宣言」延長中の、学校の新型コロナウイルス対策についての 至急の要請書

2021年5月17日

大阪市教育委員会

教育長 山本晋次 様

なかまユニオン・大阪市学校教職員支部

支部長 笠松正俊

 前略。

・私たちは4月26日に「至急の要請書」を提出し、

  1. 全員一律のICT家庭学習(オンライン授業)を直ちに中止してください。
  2. オンライン授業については、登校に不安を感じている子どもがいる場合や、感染者が出た学校で補助的手段として活用できる条件づくりを進めてください。
  3. 感染者が出た学校ではPCR検査を「濃厚接触者」に限らずに、他県や他市で行われているように同学級・同学年・同じ部活動の子ども全員や全教職員に対して行い、無症状の陽性者を把握して、限定した休校・学級閉鎖を行うようにしてください。

等を要請しました。

・しかし市教委はそれに応えず、さらに「緊急事態宣言」延長の中で5月10日に、「家庭にて、ICTを活用した学習やプリント学習を行います。」という指示の、5月31日までの継続を通知しました。大阪府内でも大阪市立小・中学校の子どもたちだけが、このままでは1か月以上も授業を受けられずに自宅に閉じ込められることになります。またコロナ感染拡大自体が6月1日以降も終息を見通せない中で、さらに長くなる可能性もあります。

・改めて以下の3点を要請し、教育長が市長の政治介入に追随せずに、子どもに公教育を保障するという教育委員会の責任を果たすことを求めます。

  1. 現状の「手洗い・マスク着用指導と換気の徹底」だけでなく、子どもや教職員の感染者が出た学校ではPCR検査を「濃厚接触者」に限らずに、他県や他市で行われているように全校の子ども全員や全教職員に対して行い、無症状の陽性者を把握して、限定した休校・学級閉鎖を行うようにしてください。同じ大阪府でも他市の保健所で全員検査ができているのだから、教育長として、市長、健康局、大阪市保健所に要請し協議してください。
  2. 感染防止のために登校しない子どもには、個別にオンライン学習を含む可能な限りの学習保障をしてください。
  3. コロナ感染拡大にもかかわらず強行実施されようとしている文科省「全国学力調査」(5月27日)と大阪府独自テスト「小学生すくすくテスト(ウオッチ)」(6月8日までの期間中)への大阪市立校の参加を取りやめて、コロナ拡大の中で子どもたちに負荷をかけることをやめてください。

〇 要請の理由

・5月11日の教育委員会会議で山本教育長は、「昨年1年間、オンラインへの対応等やってきた中で、いくらかなりともICTを使って子どもたちの学ぶ権利をいくらかなりとも確保したい思いからの判断。子どもの命を第一において、その中でやれるだけのことをやるというのが市長のご判断。」と、弁解説明をしました。

そもそも、政治的中立性を確保する観点から市長の指揮監督を受けてはいけない行政委員会の教育長が、市長に責任を預けるこの発言自体に違法性があります。

・そして、4月26日からの学校現場の現状は、市教委自身の集約結果を含めて、「子どもたちの学ぶ権利をいくらかなりとも確保したい・・・」とは真逆の“学ぶ権利”の放置になっているという実態です。

*給食の前か後に2時間だけ教室に登校する以外の自宅では「ICT学習やプリント学習」としています。しかし、各学校から保護者に通知し学校HPにも掲載している実態は、ごく一部の先行の実施校以外は大多数の学校が「復習プリント学習」(宿題の増量)だけです。

*「昨年1年間、オンラインへの対応等やってきた中で、」(教育長)というのは、一人一台端末(タブレット)を全国の先頭を切って予算化してきたことですが、それが最後の学校に届いたのは4月になってからでした。これからの1年間で使い始める予定のものを、今すぐに使える準備は、先行実施校以外では全くできていません。Wi-Fi環境がない家庭には貸し出すというルーターに至っては、必要数の学校への配付すら終わっていません。

この点については文部科学省も、HPの「新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について」の「新着情報一覧」で2月19日に、「オンラインを活用した学習指導の実施に先立つ準備」が前提だと、当然の指示を公表しています。

*それでもなぜ市長と、それを受け入れる教育長が、この期にこそオンラインでとこだわり続けるのか。「子どもの命を第一において、」(教育長発言)を口実に使って、コロナ下で一律オンライン化の試行を強行するためとしか考えられません。

・市教委の集約では、毎日2時間の授業時間以外も朝から自主登校している(学校での預かりの)子どもは、小学校で平均36%、1年生は45%、6年生でも25%もいます。全校の保護者に対して希望者のアンケートを取ったら、大多数の保護者が登校を希望した学校もあります。また、校区地域の生活実態から、子どもが自宅に長時間いると家庭学習とは逆に、親からの虐待や子どもの荒れや不登校につながることが危惧されて、1時間目から通常の「授業」を続けている学校も一部にあります。

 学校は先ず第一に、子どもたちが集団で生活し一緒に育つ場で、そのことを保障した上で初めて、オンライン学習の導入をするべきです。

以上です。

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