ただちにステップアップ研修内容を是正することを求める要求書

2022年8月29日

大阪市教育委員会
教育長 多田 勝哉 様

なかまユニオン・大阪市学校教職員支部
支部長 笠松 正俊

前略。
以下を要求し、至急の団体交渉を申し入れます。

1、 要求内容
(1) N   組合員(U 小学校在籍、ステップアップ研修対象者)が、同研修の中で8月16日以降に受けたパワーハラスメント被害の原因となった「指導」内容を直ちに是正、中止し、病気休職から安心して復帰可能な、職場(大阪市教育センター)の労働安全衛生環境を保障すること。
(2) 具体的には、課題発表の項目になっている「①人権尊重についての自己意識の改善を目指して」と「②他者とのかかわり方についての自己意識の改善を目指して」は、「③授業力の向上を目指して」と同様に、ステップアップ研修開始以降の研修内容に対するN 組合員の学習活動についての指導と評価に限って進めること。

2、 経過説明
(1) 夏季休暇までの経過
 ・N 組合員はステップアップ研修中に精神疾患に追い込まれて病気休職になり、2022年3月22日からの職場(教育センター勤務でのステップアップ研修)復帰を前に、組合は以下(以下は、内容の一部)の「要求と質問書」(3月9日付)を提出して、市教委の担当課と協議の場を持ちました。
   「発病に至った諸要因の中で、ステップアップ研修自体の中にあった要因については、教育委員会に復帰にあたっての労働安全衛生環境を改善する責務があるので、改善に努めること。」
   「指導員による人格否定的な発言や、退職勧奨等のパワーハラスメントになる言動は絶対にせず、在籍校への復帰を支援すること。」
 ・意見交換の場で市教委は、組合がこれまでにあったと訴えているパワーハラスメントの意図は否定しつ
つも、本人がそう受け止めていることに対しては否定はせずに、「在籍校への復帰を支援していく」こ
とを確認しました。
 ・それを受けてN 組合員は予定通り休職から研修に復帰し、夏季休暇までの4か月半の間、研修センターでの勤務を続けて、在籍校への復帰の努力を積み重ねてきました。
  その後はずっと心身ともに不調に陥ることもなく、市教委が設定している「研修のステップ」も「第3ステップ」に進み、8月29日からの最終の在籍校研修の準備が、校長の責任の下で進んでいました。
(2) 8月16日以降の研修でのパワーハラスメントの経過
 ・しかし8月26日、N 組合員は心療内科の主治医から「1か月の休養を要する」との診断を受けました。前回の休職の復帰から2年以内の再発扱いのために、無給の病気「休職」になっています。
・なぜ急に、こんなことになったのか。
それは、夏季休暇明けの8月16日以降のステップアップ研修の、パワーハラスメントといえる研修実態が原因です。
・夏季休暇明けの初日8月16日のステップアップ研修の課題は、人権感覚チェックリストに研修開始前と現在との、人権尊重感覚の自己比較を記入させ、セルフチェックについてその評価を求めるものでした。
17日は22日に予定の第7回自己研修課題発表「自己の振り返りと今後に向けての決意」(30分間の発表)の粗原稿づくり、18日はその続きと、粗原稿に対する指導員との面談でした。
課題発表の項目は、「①人権尊重についての自己意識の改善を目指して ②他者とのかかわり方についての自己意識の改善を目指して ③授業力の向上を目指して」です。
・ところが18日の指導員3人との面談での指導員の言動は、本人が記述していた「ここまでの第四次研修で具体的にやったことを通しての考察」に対しての教育的な指摘、指導と言えるものではなく、「(N 組合員の)人間として根本的に問題のある自分の課題を抉り出せ」という立場での、書いた内容では「考察が浅い。」「伝わらない。」という攻撃でした。ステップアップ研修の開始当初から何度もしつこく本人に事実承認を強いてきた、指導員が前任校の関係者から聞いた情報(いじめへの対応、女児への対応、等)を具体的に思い出して、それらを踏まえたより深い文書にせよ、と改めて迫るものでした。
特に今回の18日の面談は、職場復帰への最後の課題はこの点だと、市教委(指導員)が恣意的に設定した不当なものでした。
・元々N 組合員は、ステップアップ研修の対象にされた経過自体が、不当だと訴えてきました。当時の前校長による本人希望外の「強要」人事で担当していた支援学級担任の経験不足の苦しさから病休取得を訴えたことに対して、前校長に「私が応援するから休まずに頑張ってほしい。」とだけ言われました。しかし前校長は、N 組合員には知らせずに市教委に「指導要請」の申請をしていました。その後N 組合員は前校長から「私も支援教育の専門ではないので、市教委から支援教育の専門の方に来て助言してもらう。」とだけ告げられたので、自分が研修対象になることを受け入れました。そしてその後の過程で前校長が、N  組合員の「指導が不適切である教員判定基準表」の「評価項目」として、「⑦児童等の意見を聞かず、対話もしない等、児童等とのコミュニケーションを図ろうとしない。」「⑧同僚教職員や管理職との意思疎通を図らず、協働する姿勢が見られない。」「⑩体罰傾向やセクハラ的な言動がある。」等の別の課題を書き加えたというのが、研修開示時点での不当な経過です。
・その結果「人権尊重」や「他者とのかかわり方」が現在の研修課題にも入っていますが、その研修の指導と評価は少なくとも、在籍校研修(子どもへの指導)を含めてのステップアップ研修が始まって以降の研修内容に対するN 組合員の学習活動に限定して行うべきです。
 根拠資料も存在しないこと(もちろんN 組合員は、非違行為での処分履歴など一切ありません!)を思い出せと言って書かせて、それをまた改めて使って、N 組合員本人も記憶があいまいになっている過去のことを踏まえて「深めて」書けと言われても、そんなことは誰にも不可能です。誰であっても書けないことを、書けと迫られて、N 組合員は急速に病気の再発に追い込まれました。
・市教委の責任の下で行われたこのパワーハラスメントにあたる言動が、N 組合員の「うつ病性障害」を再発させ、病気休職に追い込んだ原因であることは間違いありません。

3、 要求の理由
(1) パワーハラスメントを事前に防止し、起こったら解決する責任は、当然にも任用者(雇用者)の大阪市教育委員会にあります。
在籍校と同様に、在籍校以外の場での研修中も同様で、「ステップアップ研修」中(勤務職場としての教育センター)ももちろん例外ではありません。
(2) 「パワーハラスメント防止法」では、パワハラを、以下3つを満たすものとして定義しています。
 ① 優越的な関係を背景とした
 ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
 ③ 就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
(3) 今回の言動がパワーハラスメントである理由
① 課題があるとされて「ステップアップ研修」の「対象者」にされているN 組合員と、同研修の「指導員」とは、業務上の「優越的な関係」です。
② 厚生労働省は、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」の重要な一つとして、「人格否定」「人格攻撃」の禁止を行政指導してきています。
研修開始以降の言動(例えば、仮に指導員に向けた暴言があったとか、在籍校研修時に子どもの人権軽視の行為があったとか)についての反省を求めるのではなく、前任校のことも繰り返し思い出させて書かせることは、N 組合員があたかもその本質的な属性として「人権尊重についての自己意識」が欠けていると断定するような、「人格否定攻撃」です。
③ 夏季休暇に入るまでは、N 組合員は在籍校への復帰を目標にし、8月29日からの在籍校研修に向けても教材を準備して事前に研究するなど、安定して勤務してきました。急激に体調を崩して病気再発の休職に追い込まれた原因が、この数日間の指導員の言動(ステップアップ研修の内容)が「苦痛を与えた」ことにあることは、主治医の診断でも明らかです。
(4) 上記の「夏季休暇までの経過」のように、市教委は前回の復帰時に向けた組合との3月の協議の場で、パワーハラスメントと受け止められるようなことはないように復帰を支援していく、ことは回答していました。その後も一定の改善は見られては来ました。
しかし今回、それが大きく破られました。
(5) 責任は市教委にあります。主治医の診断書の「1か月後には就業できる見込み」を保障するために、N 組合員が安心して職場(当面の研修センター)に復帰できるように、パワーハラスメントに当たる研修内容を是正、中止することは、昨年度から施行・実施されている「パワーハラスメント防止法」に基づく、大阪市教育委員会の法的義務です。

                                        以上です。

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