安倍晋三元首相の国葬にかかわる文部科学省からの依頼文書を、学校園に伝達・通知しないこと、を求める 要請書

2022年8月17日   大阪市教育委員会 教育長 多田 勝哉 様  なかまユニオン大阪市学校教職員支部 支部長 笠松 正俊

前略。
安倍晋三元首相の国葬にかかわって、学校園が弔旗(半旗)を掲揚し、子どもたちや教職員に弔意(黙とう)を強制することは、「日本国憲法」に違反し許されません。よって、貴教育委員会に以下を要請します。

<要請の趣旨>

1、私たちは安倍元首相の国葬実施に反対し、中止を求めています

 7月22日、岸田内閣は、安倍元首相の「国葬」を9月27日に実施することを閣議決定しました。戦前、「天皇や国家に尽くした人を国を挙げて悼む」として天皇の勅令で制定された「国葬令」は、1947年に失効しています。安倍元首相については、森友問題、加計学園問題、「桜を見る会」問題、旧統一教会との深いかかわりもあり、その功績のみを挙げて岸田内閣が国会での審議も経ずに閣議決定だけで国葬を決めたことは、憲法第98条 「この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」に反すると私たちは考えています。私たちは、政府に、違憲違法の国葬中止を要求しています。

2、学校園が弔旗(半旗)を掲揚すること、また、子どもたち・教職員に弔意(黙とう)を強制することは許されません

葬儀は、死者との別れを悲しみ悼む儀式であり、悲しみ悼むことは一人ひとりの心の問題です。「国葬」は、国民こぞって悲しみ悼めと強要することであり、国葬による弔意の強制は、思想・良心の自由(憲法19条)に反します。安倍元首相の国葬時の学校での弔旗(半旗)掲揚は、学校が、元首相を賛美し、その死を悼むという態度を表明することであり、その正当性を、子どもたち・教職員に対して押し付けるものです。
法の根拠もない閣議決定での国葬実施と学校への「協力」要請は、政治権力の教育への介入の最たるものであり、安倍元首相の一方的な賛美は、教育基本法第14条2の「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」に反します。
学校園での黙とうの強制は、子どもたち・教職員の思想・良心・信教の自由を直接に侵害するもので許されません。
国葬によって自分の学校園で弔旗が掲揚され、黙とうを強制されることは、子どもたちにとっては、「自己の意見を形成する能力のある子どもが自身に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する」とする「子どもの権利条約」に反するものです。
そもそも、誰も国葬を実施すべき理由を子どもたちにわかるように説明できないのではないですか。
世論の多くの反対にもかかわらず安倍元首相の国葬が強行された場合でも、学校園における弔旗(半旗)掲揚や黙とうの強制はあってはならないことです。

3、「文部科学省通知の伝達は、弔旗掲揚や黙とうを学校園の判断に任せるもの」で「強制するものではない」との言い訳は認められません

世論の多くの反対にもかかわらず、安倍元首相の国葬が強行された場合、文部科学省を通じて、貴教育委員会に「協力」依頼の事務連絡が送られてくる可能性があります。
その際、貴教育委員会自らの判断・責任を回避して、文部科学省通知をそのまま学校園に伝達・通知する行為は認められません。
その行為は、学校園で実施することが違憲違法の疑いを免れない弔旗(半旗)掲揚・黙とう実施を推進(少なくとも容認)することを意味します。
そして、その通知に対する忖度を学校園に迫り、結果として、子どもたち・教職員に苦しい選択を迫って、子どもたちどうし・教職員どうしの分断をさらに推し進めることになるからです。

<要請事項>

安倍元首相国葬への協力依頼(事務連絡)が文部科学省から送られてきた場合には、大阪市教育委員会として、「学校における半旗掲揚・黙とう実施には問題がある」との認識・判断を明確にして、その文科省の協力依頼(事務連絡)を、所管する学校園に伝達・通知しないこと。

   

                         

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