上告人 「君が代」不起立被処分者 松田幹雄
「君が代」不起立戒告処分取消請求を棄却した大阪高裁判決に対して、8月8日、上告しました。9月29日には、最高裁に上告理由書と上告受理申立理由書を提出しました。
◆【上告理由書】は憲法違反をかかわって申し立て理由を述べるものです。
目次は以下の通りです。
【上告理由書目次】
第1 最一判2011(H23)年6月6日の批判 ・・・・・・・・・・・ 3
1 原審、第1審が依拠している最高裁判決について ・・・・・・・・・・ 3
2 第1審が引用する最高裁判決について ・・・・・・・・・・・・・・・ 3
3 「君が代」起立斉唱行為が儀礼的所作ではないこと ・・・・・・・・・ 7
(1) 上記最高裁判決の論拠が薄弱であること ・・・・・・・・・・・・ 7
(2) 儀式的行事における儀礼的所作とは何か ・・・・・・・・・・・・ 9
(3) 小括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
(4) 本件の検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(5) 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
4 君が代起立斉唱を命じる行為が憲法19条に対する直接的な制約であること・29
(1) 君が代の起立斉唱を強制する行為は儀礼的所作ではないこと ・・・29
(2) 規制目的からみて直接的制約であること ・・・・・・・・・・・・29
(3) 本件職務命令は上告人の思想の核心部分の制約であること ・・・・32
第2 君が代起立斉唱が子どもにとって儀礼的所作ではないこと ・・・・・34
1 原審の判断 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
2 児童・生徒に対し君が代起立斉唱を指導する行為が調教教育であること ・34
(1) 外部から客観的に見て児童・生徒の思想良心の自由を侵害していること・34
(2) 児童・生徒の内心の自由を侵害すること ・・・・・・・・・・・・34
(3) 本件職務命令が教育の本質に反すること ・・・・・・・・・・・・36
(4) 憲法26条に反すること ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
(5) 教育基本法に反すること ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
(6) 子どもの権利条約第29条に違反すること ・・・・・・・・・・・38
(7) 小括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39
第3 第2の調教教育に関する上告人の思想良心の自由の侵害について ・・39
1 上告人は上記第2の調教教育に加担したくない思想をもっていること・・39
2 人権の侵害を受けている児童生徒を教育者として放置することはできないという
上告人の思想良心の自由を侵害すること ・・・・・・・・・・・・・・40
3 小括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
処分を正当化するために、最高裁は、「慣例上の儀礼的な所作」ということばを編み出しました。2011年5月から6月の第1~第3小法廷の判決で、一斉にこのことばを使って職務命令・処分は合憲としたのです。私の地裁・高裁判決でも、それらの判決を引用して請求を棄却しています。上告のおいては、『「君が代」の起立斉唱行為は「慣例上の儀礼的な所作」』論の批判が絶対に必要でした。この点について、上告理由書作成にあたって、『東京「君が代」裁判 三次訴訟の記録 ~詮方つくれども望みを失わず~』(編集・発行:三次訴訟原告団記録集編集委員会・「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、2017年)所収、最高裁提出予定書面草稿「儀式的行事における儀礼的所作とは何か」(岡山輝明執筆)を参考にさせてもらいました。第1の1~3(3)に当たる部分です。「日の丸」に向かって「君が代」を斉唱する形式が、1930年代の後半から入学式・卒業式に持ち込まれ、1942年からの国民学校時代に一般化した事実を明らかにしました。
大日本帝国憲法下の学校儀式と言えば、3大節(昭和期は4大節)の儀式であり、それは神聖なる天皇の絶対性を刷り込む場で、その道具立ては御真影と「君が代」と教育勅語でした。そこに「日の丸」は登場しなかったのです。戦争に国民を総動員するために「日の丸」が位置付けられるようになり、入学式・卒業式に下から持ち込まれていったという経過です。上告理由書では、天皇のために命を捨てる少国民の錬成が目的とされた国民学校時代の卒業式・入学式と同じことが強制されているという事実を指摘し、この起立・斉唱行為が「慣例上の儀礼的な所作」とは言えないと主張したのです。
私の処分を認めた地裁・高裁判決は、この「慣例上の儀礼的な所作」論を土台として、教職員への起立・斉唱職務命令は「日の丸」「君が代」に否定的な考えを有する教職員にとっては思想・良心の自由の間接的な制約になる面があるが、式典の秩序維持と円滑な進行を目的とする職務命令の必要性・合理性の方が勝るから、職務命令と処分は是認されるという最高裁の論理に依拠しています。この上告理由書では、大阪市の国旗国歌条例が教職員の思想・良心の自由を直接的に制約するものであること、「君が代」起立・斉唱行為の強制が、私にとって、思想・良心の核心部分を制約する直接的制約であることを明らかにしています。第2・第3では、直接的に制約され、侵害された私の思想・良心の内容について説明しています。
◆【上告受理申立理由書】は、憲法違反以外の申立て理由を述べるものです。
目次は以下の通りです。
【上告受理申立理由書目次】
第1 経験則違反 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
1 原判決の判示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
2 原判決の上記判示が経験則に違反するものであること ・・・・・ 3
(1) 大阪府立東豊中高校国歌斉唱時発言事件判決(甲45) ・・ 3
(2) 大阪弁護士会の人権救済申立てに対する勧告書 ・・・・・・ 4
(3) ある中学1年生の例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
3 小括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
第2 国際法違反について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
1 原判決の判示内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2 自由権規約と憲法の規定を同一視することの誤り ・・・・・・・・10
3 子どもの権利条約違反・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
4 小括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
この上告受理申立理由書では、経験則違反として、児童・生徒にとって、「君が代」起立・斉唱行為が「慣例上の儀礼的な所作」ではないことを主張しました。今年の小学校卒業式・中学校入学式で「君が代」を起立・斉唱しなかった中学校1年生の生徒からから寄せられた意見についても引用・記載しています。そして、国際法違反として、条約法に関するウイーン条約を根拠に、思想・良心・宗教の自由を規定する国際自由権規約第18条の条文そのものを判断基準にすべきことを主張しています。
今後、「日の丸」に向かって「君が代」を起立・斉唱する卒業式・入学式の形式は、戦争動員のために戦中の国民学校時代に始められた事実を広く知らせ、「まわりが迷惑」などと児童・生徒に起立・斉唱を迫る学校の行為は、子どもの権利条約違反だと広くキャンペーンしていきたいと思っています。最高裁あて署名も考えます。今後とも、ご支援、よろしくお願いします。
※上告理由書(2023.9.29)
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※上告受理理由書(2023.9.29)
<4D6963726F736F667420576F7264202D2032303233303932398FBC93638E818FE38D908EF3979D905C97A7979D97528F918AAE90AC2E646F6378> (no-hinokimi-osaka.net)
※大阪地裁判決(2022.11.28)
20221128大阪地裁判決住所削除.pdf (no-hinokimi-osaka.net)
※大阪高裁判決(2023.7.27)
20230727松田さん大阪高裁判決.pdf (no-hinokimi-osaka.net)