大阪市では、「指導が不適切である教員」とされた教員に対する指導改善研修が2007年7月に法律(教育公務員特例法第25条の2)で定められる前の2003年から始められ(ステップアップ研修)、これまでに58人が研修対象者とされています(2023年1月時点)。
これまでに実施された研修の成果は惨憺たるものです。
「不適切だった指導が改善された」として現場に復帰した教員11人。
分限免職処分を受けた教員6人。
自ら退職した教員40人。
現在研修中の教員1人という状況です。
「やめさせることが目的」と言うべき研修です。
校長から教育委員会に対し「指導に課題がある教員」として名前をあげられた教員には、教育センターの担当指導員が配置され、行動が記録され、「指導が不適切である教員」に仕立て上げられていくのです。Nさんの場合も、職場の同僚が、当時の校長に対し「指導不適切教員認定申請自体おかしい」と声をあげていたにも関わらず、校長と教育センターの指導員によって、「教員としての基本的な教育的愛情に欠ける」「教科等の指導を適切に行えない」教員に仕立て上げられ、ステップアップ研修に送り込まれました。この研修制度がはらむ最大の人権侵害は、児童生徒や職場の同僚とのつながり・かかわりを完全に絶つことで対象者を孤立させ、現場復帰への思いをことごとく萎えさせることにあります。
4か月を1期とし、「原則1年(3期)の間に指導力が改善されたとされなければ分限免職」という研修制度の中で、3期目には、「このままなら分限免職」という警告書が発出されました。
それに対し、Nさんは、指導不適切教員認定過程やステップアップ研修のあり方に対して異議を申し立てる弁明書を提出しました。市民団体からも「Nさんをクビにするな」の要請書が提出されました。当組合(教職員なかまユニオン)からも、病気療養休職からの復帰時に配慮を求める要請や、研修内容のパワハラを指摘し、改善の要求などを行ってきました。このような行動・支援が功を奏し、ステップアップ研修制度開始以降で初めて、1年を超えて、第4期への研修期間延長を決定させ、職場復帰につなげることができました。
市民団体と教育委員会との「協議」においては、「ステップアップ研修の目的は指導力を改善し職場復帰を実現することであり、それができていない現状は遺憾である」旨を表明させています。
本来、教育力とは「職場の教育力」のはずです。個々の教員に不十分なところがあるのは当たり前で、「協働の実践の中で、お互いにアドバイスをし合いながら不十分なところを改善し、指導力を向上させていく」というのが、本来の「研修」、つまり「研究」と「修養」のあり方です。ステップアップ研修制度は、公的学校教育にとって「百害あって一利なし」の制度であり、その制度の下で人権を侵害され、苦しんできた仲間が大勢います。また、勤務の態様が自己の意に沿わない教員に対し「ステップアップ研修の対象者にするぞ」と脅迫するパワハラ校長も存在します。
わたしたちは、大阪市に限らず、指導改善研修制度の現状を広くリサーチし、実態を告発し、この制度の不当性を告発していきます。また、指導改善研修制度に対して声をあげたいと思う方々の力になりたいと思います。「望まない授業観察を強いられている」など困りごとを相談したいと思われる方、また、同僚がこうした状況にある情報をお持ちの方は下記にご連絡ください。
電話 080-6206-4971
メール nakama_kyoiku@yahoo.co.jp
【N組合員からの一言】
今般、現場復帰を実現できたのは、ひとえに、心折れることを食い止め、励まし、支え続けてくださった方々のおかげだと感謝しています。
特に、1年間の休職から研修に復帰するにあたって、教職員なかまユニオンが市教委に対して健康状態への配慮を強く要請してくれたことで、安心して研修に復帰し、研修の場に通い続けることができました。
分限免職になるくらいならと、心ならずも自主退職された方々が本当に気の毒です。
もしも、こうした方々が、わたしと同じように現場復帰に向けての支援を得られていたならば、再び、同僚教職員とともに新たな教育活動に励めたはずと思わずにはいられません。
同じ思いをされる方が今後現れないようにと願うばかりです。
どうぞ、教職員なかまユニオンに相談&情報をお寄せください。
【N組合員ステップアップ研修にかかわる情報】
◆Nさんを分限免職にさせない!ご支援ください(Nさんを職場に戻す会 2022年1月)
◆大阪市ステップアップ研修(指導改善研修) N先生をクビにするな!の声をお寄せください(Nさんを職場に戻す会 2022年6月)
◆要求と質問書(教職員なかまユニオン 2022年3月)
◆ただちにステップアップ研修内容を是正することを求める要求書(教職員なかまユニオン 2022年8月)
◆「Nさんの職場復帰を祝う会」報告(2023年1月)