控訴人 元大阪市立中学校教員 松田幹雄
(1)これまでの経過
2015年3月12日 大阪市立中野中学校卒業式において不起立・不斉唱
5月13日 大阪市教委が戒告処分を発令
7月10日 大阪市人事委員会に戒告処分取消を求める審査請求書を提出
2020年6月22日 大阪市人事委員会裁決「懲戒戒告処分は、これを承認する」
12月17日 大阪地裁に戒告処分取消を求めて提訴
2022年11月28日 大阪地裁横田判決「請求を棄却する」
12月8日 大阪高裁に控訴
2023年6月13日 大阪高裁第1回口頭弁論 結審
7月27日 大阪高裁判決
(2)大阪市人事委員会の審議と結果
【努力したこと】
起立・斉唱職務命令を校長に指示する教育長通知をめぐって、生徒への「君が代」指導のあり方も含めて、校長に質問・要請した経過、卒業式当日のこと、戒告処分に至る経過の事実確定。不起立不斉唱の動機・理由について、大阪市国旗国歌条例と教育長通知の下での大阪市立学校卒業式が生徒への人権侵害(「調教」と言える実態)であり、それに手を貸せないこととして整理。(2017.8.3陳述書、2018.8.22陳述書(2)、2018.10.25証人尋問[校長・処分担当課長]、2018.12.6証人尋問[請求者])
【処分者(大阪市)の書面】
「請求者は縷々主張するが、処分者は本件の判断に必要と考える点についてのみ反論を行う」として、こちらの「君が代」の歴史や生徒への人権侵害にかかわる主張はもちろん、事実経過についてすら反論することなく無視。反論は、これまでの判決を引っ張ってくることだけ。かみ合った論議にしないことが一貫した方針。
【大阪市人事委員会裁決】
請求者の記録に基づく事実についての主張と処分者主張への逐一の反論によって、確定したはずの事実経過について、処分者主張にそう事実だけを認定事実とした。争点についての判断も、これまでの判決をもとに、ほぼすべて処分者主張通り。
(3)大阪地裁での主張と判決の内容
【原告主張のポイント】
「君が代」起立・斉唱職務命令を指示する教育長通知や「君が代」指導をめぐる校長とのやり取り等の事実経過を、原告主張にかかわる事実としてすべて認定することを要求。卒業式と「君が代」指導の実態が生徒への人権侵害であることを、子どもの権利条約を根拠に主張。また、「君が代」についての歴史からする認識や生徒への人権侵害に手を貸せないという思いからの「君が代」不起立・不斉唱が、国際人権自由権規約第18条によって保護されるべき思想・良心にもとづく行為であると主張。戦前の教育、学校儀式・「日の丸」「君が代」の歴史についての小野雅章意見書を提出し「慣例上の儀礼的所作」論を批判、現在の卒業式の実態が天皇の絶対性を刷り込む場であった戦前の儀式と変わらないものになってきていることを主張した。
【被告の対応】
人事委員会での対応と同様の対応。歴史にかかわる原告主張に対しては被告書面では一切ふれずに黙殺。生徒の人権侵害、子どもの権利条約に関わる原告主張については、「君が代」不起立処分の判断に関わらないと切り捨て。後は、これまでの判決を引っ張ってきて、思想・良心の自由侵害等、問題になるようなことは何もないと述べる手法。2022年6月1日付被告5準備書面「原告は縷々主張するが、判例・通説を離れた独自の主張や、法解釈・要件事実とは無関係な独自の思想信条に基づいた意見を繰り返すだけであって、被告においてこれ以上反論することはない」
【大阪地裁判決の内容】
認定事実において、経過については原告主張内容をほぼ漏らさずに記載したが、「君が代」や学校儀式の歴史については認定事実とせず、原告の「君が代」不起立不斉唱の動機・理由についての記載は「日の丸・君が代に否定的考えを有する原告」だけ。「君が代」不起立不斉唱の動機・理由を見ないことにすることで、従来の「慣例上の儀礼的所作」論に基づいたコピペ判決を導いた。卒業式と「君が代」指導の実態が、子どもの権利条約違反と訴えたことについては、「原告は生徒の権利侵害を訴える法律上の利害関係を有していない」として、判断を示さず。国際人権自由権規約員会の日本審査の経過も示しながら主張した「自由権規約18条に従って処分取消の判決を下すべき」に対しては、これまでの判例では、思想良心の侵害にあたらないとされているからという「理由」で、自由権規約18条違反ではないとした。
(4)控訴審(大阪高裁)での訴えと判決の焦点
【控訴理由書の訴えのポイント】
生徒への人権侵害の訴え(子どもの権利条約違反)は、第3者として訴えているのではなく、控訴人の「君が代」不起立不斉唱の動機・理由の不可欠の構成部分としてあること、控訴人の「君が代」不起立不斉唱の動機・理由を事実認定した上で、それが国際人権自由権規約18条の思想良心の自由の保護に値するものなのかどうかを判断してほしいこと、昨年11月3日公表の国際人権自由権規約員会の日本審査総括所見(勧告)パラグラフ39で指摘された「締約国は、思想及び良心の自由の効果的な行使を保障し、規約第18条の下で許される狭義の制限を超えてこれを制限し得るいかなる行動も慎むべきである。締約国は、自国の法律および慣行を規約第18条に適合させるべきである。」(=裁判所は処分を取り消すべき)への見解を示すべきことなど。自由権規約委員会勧告についての寺中誠意見書を提出。
【控訴答弁書】
「控訴人は縷々主張するが、判例・通説を離れた独自の主張や、法解釈・要件事実とは無関係な独自の思想信条に基づいた意見を繰り返すだけであって、被控訴人において、原審において被告として行った反論に加えて、独自に反論することはない。もっとも、念のため、原判決において争点とされた事項について、改めて主張する。」控訴答弁書に書いているのは、原審で被告が主張し、それに対して原告が反論した後、被告が再反論しなかった主張を繰り返しただけのもの。
【2023年6月13日第1回控訴審口頭弁論】
裁判長が、被控訴人の態度を理由に結審を宣言⇒判決 7月27日(木)14:00裁判所別館84号法廷
どんな判決?注目を!※判決日同日、判決前に裁判所一周デモ(13:00 裁判所南側 西天満若松浜公園集合)
※週刊MDS 2023.7.7号 「君が代」調教NO!松田処分取消裁判控訴審 不当な結審強行
【「君が代」調教NO!松田処分取消裁判控訴審 不当な結審強行】 (mdsweb.jp)
※週刊金曜日 2023.7.7号 起立斉唱を強制する卒業式の「調教教育」には手を貸せない
◆ 君が代不起立の元大阪私立中学校教諭が処分取消を求めて控訴審 – パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ (goo.ne.jp)
※「なかま」2023年7月号 松田「君が代」処分取消裁判 高裁判決は7月27日
松田「君が代」処分取消裁判 高裁判決は7月27日「君が代」強制は子どもの権利条約違反!国際人権規約違反! | 教職員なかまユニオン (nakama-kyoiku.com)