【2024年2月 D-TaCより「君が代」指導にかかわって大阪市立学校に送ったメール】

大阪市立学校の校長・教職員のみなさま卒業式に向けた「君が代」指導では子どもの権利条約に沿った対応をお願いします

2024年2月19日
Democracy for Teachers and Children~「君が代」処分撤回!松田さんとともに ~(略称 D-TaC)

▼「君が代」強制は子どもの権利条約違反!
2015年3月大阪市立中学校卒業式で「君が代」を起立・斉唱しなかったことを理由に戒告処分を受けた松田幹雄さんは、処分の取り消しを求めて提訴し、今年1月11日、最高裁に1000以上の要請署名を提出しました。要請内容は、「『君が代』強制は、子どもの権利条約違反、国際人権自由権規約違反」だと認めてくださいというものです。

▼松田さんの訴え
子どもの権利条約は、子どもたちに、自分にかかわることについて意見を聞かれる権利(12条)を保障し、自分の意見を形成するために必要な情報を受ける権利(13条)、自分の考え(思想・良心・宗教)に反する行為を強制されない権利(14条)を規定しています。
・児童・生徒は、自分に起立・斉唱が求められている「君が代」について『どんな歌?どんな歴史があるの?』と聞いていいのです。そして、自分の考えによって、学校から求められることに従わないことも子どもの権利条約では認められているのです。
・しかし、現実の学校では、必要な情報も提供されないまま『まわりに合わせろ』『勝手なことをするな』と言われて、『日の丸』『君が代』の歴史を知って、『君が代』を歌いたくないと思っている子はつらい思いをしています。この現実は、子どもの権利条約違反と言えます。

▼子どもの権利条約違反の実例・・・季刊「はらっぱ」より
子ども情報研究センター発行の季刊「はらっぱ」12月号に掲載された「私は歌わない」と題する中学1年生の体験報告は、生徒が「君が代」の歴史等を知って起立・斉唱したくないと申し出た時に、周りの子の迷惑や卒業式の成功を理由に起立・斉唱を迫られたという体験を明らかにしたものです。子どもの権利条約違反の告発となっています。
どの学校にも「君が代」を歌いたくないと思っている児童・生徒はいるのではないでしょうか。児童・生徒から歌いたくないという意思表示があればみなさんはどうされるでしょうか。この例は決して他人事ではありません

子どもたちへの人権侵害にならないために
それは、「日の丸・君が代」の歴史や、現在卒業式に位置付けられている理由等について、事実を伝え、判断するのはあなた方(児童・生徒)だという立場を明確にすることです。その上で、お互いの考えを尊重しながら自分の考えを深めていこうと呼びかけることです。
子どもたちに直接向き合っている校長・教職員としての責任を果たしていただきたいと思います。ぜひ、よろしくお願いします。

【参考】2021年3月5日に大阪市立学校に送ったメールから     生徒への「君が代」についての説明例

【D-TaCブログ記事】
大阪市立学校に「君が代」指導についてのお願いメールを送りました | 「君が代」不起立処分撤回!松田さんとともに学校に民主主義を! (wordpress.com)

生徒】:音楽の本に、「君が代」は、「日本の国の繁栄と平和を願う歌」と書いてあります。なぜそういう意味になるのかわからないので、説明してほしいです

先生】:この解釈は、1999年に国旗国歌法ができた時に政府が行ったものです。この時、内閣総理大臣は、「日本国憲法下において国歌『君が代』の『君』は日本国及び日本国民統合の象徴であり、その地位が主権の存する日本国民の総意に基づく天皇のことを指しており、『君が代』は国民の総意に基づき、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国のことであり、『君が代』の歌詞もそうした我が国の末永い繁栄と平和を祈念したものと解することが適当である」と国会答弁しました。

生徒】:その説明を聞いても、「君」が天皇なら、なぜ、「君が代」が「我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの」になるのかわかりません。

先生】:それは、今の日本国憲法下でないとき、戦前の大日本帝国憲法下の「君が代」が、どんなもので、どんな意味とされていたかを知らないと理解できないと思います。大日本帝国憲法下の「修身」という教科の国定教科書は、「この歌は、『天皇陛下のお治めになる御代は、千年も萬年もつづいて、おさかえになりますやうに。』といふ意味で、國民が、心からおいはひ申しあげる歌であります。」と書いていました。また、大日本帝国憲法下の学校儀式では、「君が代」は「御真影(天皇・皇后の写真)に最敬礼(90°の礼)」「教育勅語奉読(校長が天皇に代わって朗読すること)」に先立って歌うこととされていました。大日本帝国憲法の下においては、「君が代」は、「天皇のためにつくすこと、命をささげること」を最高の美徳と教えた教育勅語を中心とする教育の中で重要な役割を果たしていたのです。

生徒】:大日本帝国憲法の下では、「君が代」は「天皇陛下のお治めになる御代」の永遠を願う歌だったのですね。同じ歌をどうして「我が国の末永い繁栄と平和を祈念する歌」と解釈するのですか。

先生】:大日本帝国憲法は「第一条 大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」「第三条天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」であり、大日本帝国は天皇主権の国家でした。日本国憲法は、前文で、主権が国民に存することを宣言し、第一条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」です。国民主権の国となり、天皇の地位も変わったことから、大日本帝国憲法下の「君が代」の意味のままでは憲法に違反することになるので、多少無理があっても、国民主権の日本国憲法の下でも通用するような解釈に変えたということです。「君が代」、すなわち「天皇の代」を「我が国」と解釈するのが適当であるというのが日本政府の判断だということです。

生徒】:卒業式では、なぜ、「君が代」を斉唱することになっているのですか。

先生】:文部科学省の定めている学習指導要領では「入学式や卒業式などにおいては、その意義をふまえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」としています。文部科学省は「国際的な交流が進む中で、日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てることが大切」「国旗・国歌に対する正しい認識を持ち、それらを尊重する態度を育てることが、国際社会において尊敬され、信頼される日本人となるために必要」「卒業式や入学式は、国家への所属感を深めるためにいい機会」とする認識から定めていると説明しています。

生徒】:日本人じゃない人は対象外ですか。嫌なら歌わなくていいのですか。

先生】:外国人生徒への指導については示されていませんが、大阪市教育委員会は、『君が代』斉唱は強制ではないと言っています。そして、次のような立場を示しています。「国旗・国歌の指導は、学習指導要領に則って取り組む教育活動の一つです。これに関して、教育活動の一部または全部に参加できない意思を示す児童・生徒がいた場合、その思いを尊重するとともに、指導にあたっては、児童・生徒の実態をふまえながら、参加のあり方について、当該児童・生徒の気持ちに寄り添った丁寧な対応を心がけることが大切であると考えています。」

生徒】:大阪では、条例で、「君が代」の起立・斉唱が定められていると聞いたのですが…。

先生】:2011年6月に大阪府議会で「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」が制定され、2012年2月に大阪市議会で、同様の条例が制定されました。「府民(市民)、とりわけ次代を担う子どもが伝統と文化を尊重し、それらを育んできた我が国と郷土を愛する意識の高揚に資すること」などを目的として、「国歌の斉唱にあたっては、教職員は起立により斉唱を行うものとする」とされました。ただし、これは教職員についての規定であり、生徒や保護者に対する規定ではありません。

生徒】:「君が代」の解釈は変わったということですが、「君が代」の扱いは、戦前とあまり変わっていないのかなと感じるのですが…。

先生】:学校教育や儀式的行事の中での「日の丸」「君が代」の扱いは、戦前と戦後では当然違います。日本国憲法第19条「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」という規定は、民主主義の社会はその社会を構成するひとりひとりが自由に自分の考えを持つことを保障されてこそ成り立つという考え方に基づいていて、もっとも大切な権利とされています。日本も批准している「子どもの権利条約」でも、生徒にもこの権利があること、自分に関わることに対して意見を言う権利やそのために必要な情報を求める権利があることを規定しています。国旗・国歌、「日の丸」「君が代」についても、自分の考えを深めてください。また、友達の意見にも耳を傾け、それぞれの意見・立場を尊重し合いましょう。

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