「SNSの私的利用を不法に制限しないことを求める」要求書

2020年8月19日

大阪市教育委員会 教育長 山本 晋次 様

なかまユニオン・大阪市学校教職員支部 支部長 笠松 正俊

 前略。大阪市教育委員会は7月10付の校長宛文書「R2年6月の懲戒処分について」で、以下の内容を「懲戒処分とまでは至っていないが、・・・」として付記している。

「教職員が私的なアカウントで投稿している内容に対する通報等が増加傾向にあり、SNSの利用に関する事案も発生している。・・・勤務時間外においても、服務観察だより(第21号)で留意事項を周知しているとおり、私的なアカウントとは言え投稿内容によっては、投稿者が特定され、勤務する学校園などに抗議を行われる等、公務に影響を及ぼす可能性等もある。・・・SNSの私的利用にあたっては、より慎重な対応が必要であることを改めて周知徹底されたい。・・・所属教職員に対しても、別紙について、・・・周知徹底するとともに、・・・服務規律の保持に努められたい。」

これについて、教職員の勤務労働条件である職場の労働安全衛生環境にかかわる以下の要求書を提出し、団体交渉を申し入れます。

〇 要求内容

  1. 勤務時間外のSNSの私的利用を、不法に制限しないこと。
  2. 2013(H25)年11月27日付人事室長通知「ソーシャルネットワークサービスの利用にあたっての留意事項」に書かれている、「②・・・、不敬な表現は控えること」という文言を、転用しないこと。

〇 要求理由

 ・上記の7月10日付の校長宛文書についてわたしたちは、以下の質問を提出した。

「今回改めて周知徹底する理由として、「教職員が私的なアカウントで投稿している内容に関する通報

等が増加傾向にあり、SNSの利用に関する事案も発生している。」からだとしている。

*増加傾向にあるとする通報の内容を、情報提供してください。

*発生してるという事案を、具体的に説明してください。」

 ・これに対する市教委の口頭回答(組合が筆記)は、以下の内容だった。

  「(通知を出した理由は主に以下の2つだ。)

*大阪市かはわからないが、教員が児童・生徒のことをSNSにアップしていた事例があった。

*コロナ感染拡大の中で、大阪市の教員と思われるが、教員と明かして、飲み会の場面をSNSにアップした事例があった。」

 ・私たちはこの回答には納得できない。

  市教委が強調している「服務観察だより(第21号)」(R2年6月)の1ページに掲載の「留意事項」(H25年人事室長通知)の全6項目は、「③地方公務員法における政治的行為の制限や職員の政治的行為の制限に関する条例の趣旨に抵触するような表現は控えること」を始め、そのほとんどが(教)職員の「政治的発言」に関するものだ。今回の市教委回答の2つの理由事例は、せいぜい最後の項目の「⑥ その他本市の信用を失墜するような表現・投稿は控えること」にしか当たらない。

  今回の2つの事例を機に市教委が、勤務時間外の教職員の政治的発言のSNS発信を制限しようとしていることは、憲法第21条

  (表現の自由、通信の秘密)に抵触し不当だ。

 ・なお、「留意事項」の「③・・・職員の政治的行為の制限に関する条例の趣旨に抵触するような表現は控えること」に関しては、大阪市会での同条例制定直前の2012年7月24日に、私たちの組合(大阪市職員支部と大阪市学校教職員支部)は大阪市と公式の面談質疑を1時間余り行い、担当部局の人事室は以下のことを公式に口頭回答しています。

  「大阪市の回答 職員の政治的行為の制限に関する条例案の適用範囲について

  1.  職員の政治的行為を制限するのは、条例案第2条に記載する10項目の行為について政治的目的をもって行われた場合に限る。この条例でいうところの政治的目的とは、条例案第2条に記載する「特定の政党その他の政治的団体若しくは特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、若しくはこれに反対する目的又は公の選挙若しくは投票において特定の人若しくは事件を支持し、若しくはこれに反対する目的」を言う。
  2. 政治的目的の一般的解釈は、現市長の政権(包含関係にある政府や大阪府も対象になる)を転覆させることだと言える。現市長の政権を転覆させるという目的を持っていない発言や単なる政策に対する意見は、制限の対象とはならない。大阪市の政策に対して職員が意見を言うことに制限を加えるという趣旨ではない。
  3. この条例案は、政権の転覆を図るという政治的目的を持つ場合、若しくは選挙の中立性を損なう行為について制限するという地公法等の範疇で解釈する。
  4. 条例案で対象とする地域は大阪市内である。ただし、大阪市外から市内に向かって行われた行為が市内で完結する場合には対象とする。また、勤務時間外の行為も対象とする。」

  つまり、例えば「松井市長は辞任せよ!」は同条例違反だが、「松井市長は、〇〇を止めろ!」「〇〇政策反対!」「〇〇は導入するな!」という市政の政策批判は、市職員・教職員のビラもデモもSNS発信も市民としての政治的権利で、この条例違反はないという、現行の地方公務員法に基づく当然の回答です。なお当時の橋下市長はこれらの行為を「処分だ!」と息巻きましたが、当時も今も、橋下市長が違法なのです。

 ・「要求内容」の(2)に関連して、「服務観察だより(第21号)」(R2年6月)の2ページ「SNSの不適切な投稿によって処分された事案」には、「上司である市長等に対し、・・・不敬な表現での投稿を繰り返した。⇒ H25年9月:文書訓告」と表現されています。

  「大日本帝国憲法」時代の刑法の「不敬罪」は、天皇・皇族等に対する「罪」でした。現「日本国憲法」制定で刑法改正で「不敬罪」は廃止され、「不敬」は象徴天皇に対しては当然使いません。「不敬」は、戦前の「天皇」と「臣・民」という主従の上下関係を前提にした概念なので、それ以外の相手に対しても現在ではほぼ使いません。例えば、「社長に対して失礼だぞ!」とは言っても、「社長に対して不敬だぞ!」とは使いません。社長と労働者は、主従関係ではなく、雇用関係だからです。

  大阪市が「市長に対する不敬」という文言を残し、市教委がそれを転用することは、市長と(教)職員が「雇用(任用)関係ではなく、主従関係だ。」ということになってしまい、不適切な表現です。

以上です。

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