2021年8月2日
大阪市教育委員会 教育長 山本 晋次 様
なかまユニオン・大阪市学校教職員支部 支部長 笠松 正俊
前略。松井大阪市長は7月30日の記者会見で、教育委員会とも相談しているとして、「8月に修学旅行を予定している中学校4校は、出発の2日前に全生徒にPCR検査をして、陽性判定以外の生徒の参加で実施したい。」旨を発言した。これに関して、至急の質問と要請を出し、回答を求めます。
1、質問
①4校の学校名を教えてください。(各校のHPでは、行事予定として公開されていると思います。)
②松井市長は会見で、「何とか実施してやりたいという声が、私たちにも届いている。」と発言しました。この4校の、どの学校からどんな声が出ているのかを、具体的に情報提供してください。
③7月30日の市長会見までに、実施の場合の条件や可否について、大阪市保健所の意見を求めましたか、それとも相談していませんか。
2、要請
①学校行事の実施の可否を決めるのは、法律上校長の責任です。4校一律に市教委が指示するのではなく、各学校ごとの感染状況と生徒・保護者の意見の違いを踏まえた教職員の相談と、学校ごとの判断を保障し、指導してください。
[付記]
・コロナ感染下の運動会等の学校行事やプール水泳等の学習指導について、この間市教委は学校ごとの判断を指導してきています。修学旅行も同じ扱いのはずです。
・また松井市長は会見で、「陽性判定の生徒が参加できないのは(インフルエンザで出席停止になるのと同じで、)当たり前だ。」と発言しました。しかし普段の授業で感染生徒が出席停止になる問題とは違って、学校行事、特に修学旅行については、生徒集団としての行事の意味を踏まえた判断を尊重してください。(友だちが行けないなら自分も行きたくない、と考える子どものことを含めて、学校現場の教育の課題です。)
②松井市長に、法律違反の記者会見での発言の撤回を求めてください。
[付記]
・「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(地教行法)は、「第1条の3」で以下のことを法定しています。
「第4項 第1項の規定は、地方公共団体の長に対し、第21条に規定する事務を管理し、又は執行する権限を与えるものと解釈してはならない。」
同法の「第21条」とは、以下です。
「第21条 教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する。
第5項 教育委員会の所管に属する学校の組織編制、教育課程、学習指導、生徒指導及び職業指導に関すること。
第9項 校長、教員その他の教育関係職員並びに生徒、児童及び幼児の保健、安全、厚生及び福利に関すること。」
・4月末の「一律オンライン家庭学習」発言に対しても組合から市長に直接抗議文を提出しましたが、首長が学校教育の運営内容について直接言及し公表することは、公教育への政治介入と政治利用になる違法行為です。
・なお、全国知事会(吉村府知事も加入)が8月1日に、夏休み中の都道府県境をまたいだ旅行や帰省を原則中止、または延期するよう求める国民向けのメッセージを出した。家族単位などの少人数でも中止をよびかける知事会と、集団での旅行をやりたいという大阪市長との「対立」について、市長には説明責任が新たに起こっている。
③市教委と市長は、各学校が判断できるように、保健所との連携や財政措置について以下等の支援を、全力で行ってください。
(1)4校について、「出発日直前」だけでなく直ちに、1年~3年の全学年と教職員全員のPCR 検査を実施してください。
(2)その全校検査結果を生徒と保護者に公開し、学校ごとに違うと思われる無症状の陽性者の現状を踏まえた判断ができるようにしてください。
(3)そのために大阪市保健所との協議を、市教委の責任で急いでください。
[付記]
・「地教行法」第57条と同法「施行令」第8条は、その市教委の責務を法定しています。
「第8条 法第57条第1項の規定により教育委員会が地方公共団体の長に対し保健所の協力を求める事項は、次のとおりとする。
第3項 修学旅行、校外実習その他学校以外の場所で行う教育において、・・・施設及び設備並びに食品の衛生に関すること。」
(4)実施困難(中止判断)校に対しては、代替の卒業学年行事の計画・実施について、近隣施設の利用や経費の補助に関して、支援をしてください。
④この4校以外も、全ての大阪市立小・中・高校について、少なくとも1人でも感染者が出た学校に対しては、生徒・教職員全員のPCR検査を、今こそ実施してください。
[付記]
・大阪市保健所のPCR検査体制は、これまでよりは改善されつつあると市長自身が発 言し、また例えば高齢者施設の職員全員のPCR検査も、行われるようになりつつあると伝わっています。修学旅行予定の4校に対してできることは、他の全ての学校にも保障すべきです。
以上です。