「君が代」調教NO!裁判 2023.7.27大阪高裁判決報告(D-TaCブログから転載)

大阪高裁 国際社会から笑われる「独自の見解」で控訴を棄却
最高裁に上告して闘いを続けます
控訴人 元大阪市立中学校教員 松田幹雄

7月27日(木)14:00から大阪高裁(別館)84号法廷で、「君が代」調教NO!松田「君が代」処分取消裁判控訴審判決がありました。
◆2023.7.27大阪高裁判決はこちら↓
20230727hanketsu.pdf (wordpress.com)

20数名の支援のなかまとともに、裁判所一周デモを行ってから判決言い渡しに臨みました。
デモコール
*君が代を子どもたちに押し付けるな           
*大阪高裁は 松田「君が代」処分を取り消せ    
*「君が代」強制は 子どもの権利条約違反だ    
*「君が代」処分は 国際人権自由権規約違反だ
裁判に込めた主張をみんなでコールしました。

満席の傍聴席の前で、阪本裁判長は、「本件控訴を棄却する」「訴訟費用は控訴人の負担とする」と主文だけを読み上げ、そそくさと姿を消しました。控訴棄却の不当判決でした。

「君が代」調教NO!松田「君が代」処分取消裁判の大阪高裁判決に至る経過は以下でした。

2022年11月28日 大阪地裁判決「請求棄却」
20221128chisaihanketsu.pdf (wordpress.com)   
   12月8日 控訴状提出
2023年3月10日 控訴理由書提出
kousoriyusho20230310.pdf (wordpress.com)
    4月27日 控訴答弁書届く
20230427_tobensho-2.pdf (wordpress.com)
    6月13日 大阪高裁第1回口頭弁論 結審
        控訴人意見陳述
2023.6.13ikenchinjutsu.pdf (wordpress.com)
     7月27日 大阪高裁判決
20230727hanketsu.pdf (wordpress.com)

閉廷後受け取った判決文は、たった10ページだけでした。
私は、6月13日の口頭弁論意見陳述で、
「裁判官のみなさまには、私にとっての「君が代」起立・斉唱の意味、特に、子どもたちへの権利侵害に手を染めることはできないという私の不起立・不斉唱の理由について認定いただき、それが国際人権自由権規約第 18 条で保護される権利であるとの判決をぜひともお願いしたいと思います」と述べましたが、高裁阪本判決は、私の不起立・不斉唱の理由について具体的に認定することなく、これまでの判決の枠組みを頑なに踏襲したものでした

判決文の「第3 当裁判所の判断」(P5)は、「当裁判所も、控訴人の請求は理由がないと判断する。その理由は、次の2のとおり、当審における控訴人の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決『事実及び理由』欄の第3の1ないし11に記載の通りであるから、これを引用する」で始まります。
原判決(2022.11.28大阪地裁横田判決)P23~P43は、そのまま高裁での判決だとしたのです

続いて、「2 当審における控訴人の主張について」として、4つの争点についての判断を述べています。ここでは、特に問題にしたい部分2箇所紹介しておきます。

1箇所目は「(1) 控訴人の思想及び良心の自由の侵害について」のP6~P7です。

判決文「イ また、控訴人は、控訴人の思想及び良心は、①「君が代」の起立斉唱をしないというものだけではなく、②教員が起立斉唱に関する職務命令に従うことを通じて、児童・生徒に対して君が代起立斉唱を強いる調教教育の一端を担うことを拒否するというもの、③人権侵害を受けている児童・生徒を教育者として放置することはできないというものであるから、本件各職務命令はこれらの思想及び良心の核心部分を直接的に制限するものであるなどと主張する。
しかしながら、公立学校における卒業式等の式典における国歌斉唱時の起立斉唱行為が、一般的、客観的に見て、これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、かつ、そのような所作として外部からも認識されるものであり、このことは、教員だけではなく、式典に参加する生徒の立場に立っても同様に評価することができるから、上記の起立斉唱行為が生徒に対し特定の思想等を押し付ける調教教育と評価されるものでもない。」

児童生徒に起立斉唱を強制できないことは、国も「国旗国歌法」制定時の国会審議ではっきり認めていました。これまでの国策判決では、「慣例上の儀礼的所作」を持ち出すのは教職員の起立・斉唱の関係だけで、児童生徒の起立・斉唱にはふれないのが常でした。この判決では、私が「児童・生徒に対して君が代起立斉唱を強いる調教教育の一端を担うことを拒否する」という不起立不斉唱の理由を主張したことに対して、「慣例上の儀礼的所作」だから生徒に起立・斉唱を求めることも問題ないと、思慮なく今までの判決を踏み越えてしまったのではないでしょうか。
しかし、「慣例上の儀礼的所作」だから生徒に強制していいということか、と問われれば回答に詰まらざるを得ない判決なのです。私は、「君が代」起立・斉唱はそもそも「慣例上の儀礼的所作」などではなく、明治以降、天皇制支配のために学校儀式に導入したもので、戦後も力・強制によって学校現場に持ち込み、定着させたものであると控訴理由書P14~P27「第5 思想良心の自由の侵害(争点2について)」で主張しましたが、それに何ら反論しないまま、「慣例上の儀礼的所作」を使っているわけです。判決の問題点は明らかです。

2箇所目は、「(3) 本件各職務命令が控訴人に国際法上認められた諸権利を侵害するものであることについて」のP8~P9です。

判決文「控訴人は、自由権規約委員会の第7回総括所見を引用して、自由権規約18条違反を主張する。
自由権規約18条1項は、思想、良心及び宗教の自由についての権利を規定するところ、同項に定めるこれらの自由の性質に照らし、これに対する制約の有無についても、直接的な制約か、間接的な制約かという制約の態様に即して判断し、間接的な制約となる面がある場合に、その許容性を、本件各職務命令の目的及び内容並びに制約の態様等を総合的に衡量して、その制約を許容し得る程度の必要性及び合理性が認められるか否かという観点から判断するのが相当である。このような観点から検討すると、本件各職務命令が思想、良心及び宗教の自由を侵害するものとは言えないから、自由権規約18条に違反するものでないことは、先に補正して引用した原判決「事実及び理由」欄の第3の7(1)イで説示した通りである。控訴人が引用する自由権規約委員会の総括所見によっても、この結論は左右されない。」
『原判決「事実及び理由」欄の第3の7(1)イ』(P38)は「前記3の説示によると、本件各職務命令は、思想、良心の自由及び宗教の自由を侵害するものとはいえないから、同条に違反するということはできない」というもの。「前記3の説示」とは、原判決P30~P35「3 争点2(本件各職務命令及び市国旗国歌条例が原告及び生徒らの思想及び良心の自由を侵害するか)」の部分。)

憲法第九十八条の第2項には「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とするとあり、自由権規約18条についての有権的解釈である自由権規約委員会「一般的意見22(18条思想・良心・宗教の自由)」では、以下のことが述べられています。
「3 第18条は、 思想、 良心、 宗教又は信念の自由を、 宗教又は信念を表明する自由とは区別している。 本条は、 思想及び良心の自由、 又は自己の選択による宗教又は信念を受け入れ又は有する自由に対していかなる制限も許容しない。かかる自由は、第19条第1項で定められる誰もが干渉されることなく意見を持つ権利と同様に、無条件で保護される。…」
「5 …第18条第2項は宗教又は信念を受け入れ又は有する権利を侵害する強制を禁じている。…非宗教的な性格のあらゆる信念を有する者にも同じ保護が与えられる。」
「8 第18条第3項は、 法律で定める制限による場合であって、 公共の安全、 秩序、健康もしくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要である場合に限って、宗教又は信念を表明する自由の制限を認めている。…委員会は、 第18条第3項は厳密に解釈されるべきであると考える:制約は、たとえそれが、国の安全等、 規約で保護されている他の権利の制限の根拠として認められるものであっても、本条項に定められていないものを根拠として認められてはならない。…」
また、「約法に関するウィーン条約第二十七条(国内法と条約の遵守)は、「当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない」としています。

※憲法 日本国憲法 | e-Gov法令検索
※自由権規約 日本弁護士連合会:市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約) 条約本文 (nichibenren.or.jp)
※一般的意見 日本弁護士連合会:自由権規約 条約機関の一般的意見 (nichibenren.or.jp)
※条約法に関するウィーン条約 条約法に関するウィーン条約 抄 (doshisha.ac.jp)

自由権規約18条では、この条項に定められていないことを根拠に信念の表明を制限できないとされているのに、大阪高裁は、「間接的制約」だとか「総合的に衡量」などという自分たちで勝手につくった理屈でもって、自由権規約違反でないとしたのです。この「独自の見解」で、2022年11月3日公表の自由権規約委員会日本審査総括所見を否定した判決は、国際社会から大きな非難を浴びることは確実です。(2023年6月11日付で大阪高裁に提出した寺中誠さんの意見書参照ください)

※2023.6.11寺中誠さんの意見書 ikensho_teranaka.pdf (wordpress.com)

私は、不当な「君が代」処分の取り消しを求めて最高裁に上告します。「君が代」強制が、子どもたちの人権を侵害し、教育を捻じ曲げ、腐らせていることを訴えて、引き続き闘います。引き続き、ご支援お願いいたします

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