大阪高裁判決の内容
注目の判決は「4万4262円を支払え」でした。2020年3月、欧州から帰国した者の「2週間の自宅での自宅等での待機と公共交通機関不使用」が政府方針となっていた時期(政府方針決定は3月18日 適用は3月21日以降に帰国した者 原告がスイスから帰国したのは3月17日)、原告の自宅での「研修」(在宅勤務)を認めなかったことを、裁量権の逸脱濫用・国賠法違反とした一審判断が維持されるかどうかが注目点でした。高裁判決は違法判断を取り消し、慰謝料5万円を減額したのです。高裁判決は、「原告が行ったのは在宅勤務であり、研修とは認められないので、承認研修申請を承認しないのが正しく、承認しなかったことに違法性はない」「政府から、欧州からの帰国者に対して2週間の待機及び公共交通機関を使用しないことが要請されたが、対象者は3月21日以降の帰国者であり、原告に対して積極的に自宅待機や在宅勤務をさせるべき状況にあったとまでは認められない」としたのです。
コロナ対策の基本を無視したと公然と表明した大阪市
当時の問題となっていたのは、在宅勤務を研修としていいかどうかではありません。政府専門家会議の方針が示された2020年3月17日に欧州(スイス)から帰国した原告(松田)を通常通り出勤させていいのかどうかということでした。政府専門家会議は「ヨーロッパ諸国…からの(新型コロナウイルス)移入が疑われる事例が3月10日以降増加している」として、3月17日、「欧州等からの帰国者への2週間の待機要請」を厚労省に申し入れていたのです。大阪市(市教委)が、在宅勤務を検討することもせず、PCR検査も受けさせないで、校長責任で考えてもらうしかないという態度をとったために、学校で一生けんめい考え、工夫して実施しようとしたのが自宅での研修扱いとしての在宅勤務でした。
大阪市は、控訴理由書の中で「被控訴人には体調不良等が生じてはおらず、…日本国内で生活していた他の教員と区別する理由がなかった」から「出勤命令は当然」述べました。欧州から入国・帰国した者が症状の自覚がなくても感染を拡大する危険があるとの認識に立って実施していた政府のコロナ対策を無視したと表明したわけです。「こんな大阪市の態度を擁護する高裁判決を是認できない」…原告(松田)は最高裁への上告を決意しています。
※2024.1.24大阪高裁判決
hanketsu_kousai.pdf (wordpress.com)
※2023.5.17大阪地裁判決
20230517-$z Þ¹ (wordpress.com)
※2020.10.28大阪地裁原告冒頭陳述(この裁判に求めていることについての陳述)
20201028boutouchinjutsu.pdf (wordpress.com)
※2020.12.16付原告第1準備書面
(当時の状況 京都産業大学生へのバッシング等)
20201216junbishomen1.pdf (wordpress.com)
※2023.7.14大阪市控訴理由書
kousoriyusho.pdf (wordpress.com)
★一部抜粋(控訴理由書P41~P42)
【本件で被控訴人に対して自宅での承認研修を認めた場合のその理由は、結局のところ、「被控訴人が私用でスイスから帰国したところ、スイスにおける新型コロナ感染者が増えていたことから、被控訴人も新型コロナに感染しているおそれがあり、そのような被控訴人を出勤させることによって新型コロナの感染を助長することにつながるおそれがある」ということに尽きるわけであったが、他方で被控訴人には体調不良等が生じてはおらず(原判決でも認定されている。原判決23頁)、そうなると、被控訴人が新型コロナに感染しているおそれは抽象的なものに過ぎず、日本国内で生活していた他の教員と区別する理由がなかったのであるから、例外を認める事情がないと判断しても、考慮すべき事情を考慮しなかったことにはならない。…単に私用でわざわざスイスに行き、そのスイスの感染者数がたまたま増えていたという理由だけで、体調不良等が生じていない被控訴人にだけ自宅での承認研修を認めた場合、他の教員の中に、「体調不良等が生じていなくとも、新型コロナに感染しやすい場所から帰ってくれば自宅での承認研修が認められるのであれば、自分もそのような場所に行くことによって、自宅での承認研修を認めてもらおう」と思う者が出てきたり、そこまではしないとしても、不公平であると感じる教員が出てきて、学校運営に支障を来たすおそれもあったのであったのである。】
※原告(被控訴人)控訴答弁書(P19~P20でしっかり反論)
kousotobensho20231011.pdf (wordpress.com)