コロナ在宅勤務不払い裁判 控訴審(大阪高裁)第1回期日決定 10月17日(火)15:20 大阪高裁(別館)82号法廷

こっそり控訴の大阪市 控訴理由書の中身は?

7月14日付で大阪市(横山市長)から控訴理由書が届きました。

5月17日の大阪地裁横田判決は、『2020年3月19日、23日、24日の3日間、原告(松田)が職場に出勤しなかったのは、校長の提案など学校側の責任なので、3日分の給与4万4262円を支払え』『当時はコロナに関する知見が乏しく、感染対策を模索していた情勢だったのに考慮せず、市教委の指示に従って過去の通知を形式的に漫然と適用して自宅での研修を承認しなかった校長の判断は「社会通念上の妥当性を欠き、裁量権の逸脱・乱用」「職務上の義務違反で国賠法1条1項違反」なので、慰謝料5万円を支払え』『…原告が帰国した翌18日には、新型コロナ対策専門家会議の要請を踏まえ、政府が欧州からの帰国者に対し、指定場所での2週間の待機や公共交通機関の利用自粛を要請することを発表し、被告も、原告が帰国した4日後である同月21日以降の帰国者について2週間の職務免除を実施していること(認定事実(1))など、市教委が本件承認研修を認めないとした時点(同月24日)において存在し、かつ市教委において把握していたと推認できる当時の社会情勢については、上記例外的な取扱いを認めるべきか否かに際して十分考慮すべき事情であったといえる。』としていました。

控訴理由書は、この判示にどう反論したのでしょうか。反論の内容は以下のようなものです。

2020年3月19日、23日、24日の3日分の給与4万4262円を支払え

被控訴人(松田)は新型コロナ感染状況が厳しいことを自覚した上で渡航し、帰国後は自らが新型コロナ感染症拡大の原因を作出したとして社会的に非難されることを恐れ、一貫して出勤しないとしていたのだから、就労の意思を欠いていたのであり、欠勤の責任は学校ではなく原告にある

「裁量権の逸脱・乱用」「職務上の義務違反で国賠法1条1項違反」なので、慰謝料5万円を支払え

「新型コロナに関する社会情勢等」は、自宅での承認研修を認めるかどうか判断するうえで考慮すべき事情ではない。被控訴人(松田)の自宅での承認研修申請は、出勤しない理由づけの方便であり、承認研修の要件を満たしていない。被控訴人(松田)には体調不良等が生じておらず、他の教員と区別する理由がなかった

当時の欧州からの帰国者への政府対応方針にまったくふれず  職員管理のために大阪市は政府方針を無視したと告白

 控訴理由書(P41~P42)は、次のように述べています。

「本件で被控訴人に対して自宅での承認研修を認めた場合のその理由は、結局のところ、「被控訴人が私用でスイスから帰国したところ、スイスにおける新型コロナ感染者が増えていたことから、被控訴人も新型コロナに感染しているおそれがあり、そのような被控訴人を出勤させることによって新型コロナの感染を助長することにつながるおそれがある」ということに尽きるわけであったが、他方で被控訴人には体調不良等が生じてはおらず(原判決でも認定されている。原判決23頁)、そうなると、被控訴人が新型コロナに感染しているおそれは抽象的なものに過ぎず、日本国内で生活していた他の教員と区別する理由がなかったのであるから、例外を認める事情がないと判断しても、考慮すべき事情を考慮しなかったことにはならない。…単に私用でわざわざスイスに行き、そのスイスの感染者数がたまたま増えていたという理由だけで、体調不良等が生じていない被控訴人にだけ自宅での承認研修を認めた場合、他の教員の中に、「体調不良等が生じていなくとも、新型コロナに感染しやすい場所から帰ってくれば自宅での承認研修が認められるのであれば、自分もそのような場所に行くことによって、自宅での承認研修を認めてもらおう」と思う者が出てきたり、そこまではしないとしても、不公平であると感じる教員が出てきて、学校運営に支障を来たすおそれもあったのであったのである。」

「被控訴人には体調不良等が生じてはおらず…被控訴人が新型コロナに感染しているおそれは抽象的なものに過ぎず、日本国内で生活していた他の教員と区別する理由がなかった」はぁ?です。

⇒2020年3月17日の新型コロナ感染症対策政府専門家会議の厚労省要請(地裁甲5号証の1甲5号証の2)、2020年3月18日の政府発表方針(地裁甲5号証の3)を見てください。

私は、2020年3月17日、スイスから帰国した日に、コロナ感染症対策政府専門家会議が欧州からの帰国者・入国者に対して、2週間の自宅等での待機と公共交通機関不使用の要請をするよう厚労省に要望したことを知りました。翌日3月18日にはそれが政府方針となり2020年3月21日からは欧州からの帰国者には検疫がなされ、この措置が実施されたのです。私が、出勤を控えるべきではないかと思ったのは、これらのことを知って、自分がこの措置の対象者だと自覚したためでした

3月17日、厚労省への要望提出後、政府専門家会議脇田座長は、「症状がない人も感染させる恐れがある。感染に気づかないまま動き回ることで、感染を広げ感染者が増える可能性がある」と言っていました。

2020年3月24日、校長が自宅での承認研修を認めないと言った時点で、この措置に関係があると思われる欧州からの帰国者は大阪市全学校園で私だけ、ただ一人でした。

「被控訴人(松田)には体調不良等が生じておらず、他の教員と区別する理由がなかった」とする大阪市(横山市長)は、コロナ感染症拡大防止の政府方針を無視していたと堂々と表明したわけです。

そのうえ、ご丁寧にも、体調不良等が生じていない被控訴人(松田)に自宅での承認研修を認めると真似をするものが出てくるかもしれないし、不公平であると感じる教員がでてきて、学校運営に支障を来たすおそれもあったなどといっているのです。

これが、大阪市(横山市長)の職員に対する見方です。職員管理のために政府のコロナ感染症対策の方針を無視したわけです。このような姿勢が大阪市がコロナ関連死者数で日本一の理由ではないでしょうか。

働いたことを認めさせ、実損14万7723円以上を大阪市に支払わせたい

今後、こちらからは、控訴答弁書と附帯控訴状を提出します。大阪市(横山市長)の控訴は、当初の担当課の「控訴しない。判決に従う。」という原案を覆してなされたことが分かっています。控訴したことが藪蛇だったと思い知らせたい。そのためにも、実損14万7723円(欠勤扱い8日分の給与11万8034円、欠勤を理由にした賞与減額分2万9689円)以上の支払い判決を勝ち取りたいと思います。引き続きご支援をよろしくお願いします。

控訴理由書(2023.7.14)
kousoriyusho.pdf (wordpress.com)
大阪地裁横田判決(2023.5.17)
20230727hanketsu.pdf (wordpress.com)
政府専門家会議の厚労省要請(2020.3.17)
 甲5号証の1
kou5-1.pdf (wordpress.com)
 甲5号証の2
kou5-2.pdf (wordpress.com)
政府発表方針(2020.3.18)
 甲5号証の3
kou5-3.pdf (wordpress.com)

タイトルとURLをコピーしました